細長い棒にチョコレートがかかっていて、形は野球のバットを模している。チョコバットは、駄菓子売り場に長く置かれている菓子です。
名前も形も野球から来ていますが、中身はパンです。公式の説明と原材料表示から、この菓子の構造を見ていきます。
1964年発売のロングセラー
作っているのは三立製菓です。公式の商品ページには、こう書かれています。
「駄菓子の王様!1964年発売のロングセラー!パン生地にチョコレートをコーティングした食べやすいスティックタイプ。」
発売は1964年。六十年を超えて売られ続けていることになります。
そして「パン生地にチョコレートをコーティングした」という一文が、この菓子の構造をそのまま説明しています。
原材料にパン酵母が入っている
本当にパン生地なのか、原材料表示で確かめられます。
公式に記載されている原材料名は、小麦粉、砂糖、植物油脂、ココア、マーガリン、パン酵母、大豆ペースト、脱脂粉乳、全粉乳、ココアバター、食塩、酵母エキス、乳化剤、香料です。
パン酵母が並んでいます。発酵させて作る生地だということになります。
| 原材料から読めること | 該当する材料 |
|---|---|
| パン生地の部分 | 小麦粉、パン酵母、マーガリン |
| チョコレートの部分 | ココア、ココアバター、植物油脂 |
| 風味づけ | 大豆ペースト、酵母エキス、食塩 |
同じ構図の菓子がもう一本あります。チョコあ~んぱんも原材料表示にイーストが入っていて、見立てではなく本当に発酵させたパン生地でした。チョコレート菓子の中に、パンの系統があるということになります。
パンとチョコレートの組み合わせの歴史はチョココロネはどっちから食べるかにまとめました。
なぜパン生地なのか
ビスケットではなくパン生地を選んでいることには、理由が考えられます。
ひとつは食感です。ビスケットは硬く、噛むと割れます。パン生地は弾力があり、噛みちぎる感触になります。細長い棒状の菓子では、この違いが大きく出ます。
もうひとつは乾き具合です。パン生地を細く焼けば水分が抜け、軽くなります。それでも繊維の方向が残るので、ビスケットのような均一な崩れ方にはなりません。
そして原価です。小麦粉と酵母を主体にすれば、材料の構成は単純になります。駄菓子として長く低価格で売るには、この条件が効きます。
カカオの価格が上がると、チョコレートの割合が高い商品ほど影響を受けます。生地が主体の菓子は、その影響が相対的に小さくなります。価格の動き方はチョコレート値上げの理由にまとめました。
安さを価値に変えた菓子としてはブラックサンダーも挙げられます。価格帯が設計の前提になっているという点で共通しています。
当たりの仕組み
この菓子を語るときに外せないのが、当たりです。
三立製菓の公式商品ページには、「エース1枚、またはストライク3枚でオリジナルノートが当たります。」と記されています。野球の用語が使われています。
注目したいのは、複数枚を集める方式が含まれていることです。一枚で当たるものと、三枚集めて当たるものが併存しています。
この設計は買う側の行動を変えます。一枚では足りない当たりが出たら、捨てられなくなります。次も同じ商品を選ぶ理由が生まれます。
同じ考え方の菓子としてブラックモンブランがあります。あちらは棒に印刷された点数を集めて商品と交換する仕組みでした。当たりを集めさせることで、次の購入につなげるという構造は共通しています。
当たりが中身の価値を決めた例はチョコエッグの中身はなぜ主役になったのかやチョコボールの金のエンゼルが出る確率は?でも扱いました。
同じ「覆う」構造の菓子と比べる
チョコレートで外側を覆う菓子は多くあります。中身で比べると性格が分かれます。
| 商品 | 中身 | 噛んだときの手応え |
|---|---|---|
| チョコバット | パン生地 | 弾力があり、噛みちぎる |
| チョコリエール | 充填されたクリーム | やわらかく崩れる |
| ブラックサンダー | ココアクッキー | ザクザクと割れる |
| ブラックモンブラン | バニラアイス | 冷たく、外側が割れる |
覆うという構造は同じでも、中身が体験を決めています。チョコバットの位置は、弾力のある生地という点で他と重なりません。
数字で見ると分かること
公式の情報から、いくつかの数字を並べておきます。
発売は1964年。六十年を超えています。内容量は1本で、1本単位で売られる形です。
原材料表示の最初に来るのは小麦粉です。表示は量の多い順に書かれる決まりなので、この菓子でもっとも多い材料は小麦粉だということになります。チョコレートではありません。
つまり重量比ではパンのほうが主役です。名前にチョコが付いていても、構成は生地が中心になっています。表示の読み方は「チョコレート」と「準チョコレート」の違いにまとめました。
よくある質問
Q. チョコバットの中身はビスケットですか。 いいえ。公式の説明は「パン生地にチョコレートをコーティングした」で、原材料にもパン酵母が入っています。発酵させた生地です。
Q. 当たりはどうやって確認するのですか。 公式の商品ページでは「エース1枚、またはストライク3枚でオリジナルノートが当たります」とされています。当たりの表示は包装にあります。仕組みは商品や時期によって異なるため、手元の商品の記載を確認してください。
Q. 夏でも売っていますか。 冬季限定として扱われる場合があります。表面をチョコレートで覆った細長い菓子は気温の影響を受けやすいためです。
Q. なぜ野球の名前なのですか。 細長い棒状という形がバットに似ていることから来ています。当たりの用語も野球に揃えられており、形と名前と仕組みが同じ主題でまとまっています。
冬の商品という位置
公式の情報には、もうひとつ押さえておく点があります。冬季限定として扱われる場合があることです。
理由はチョコレートの性質にあります。表面をチョコレートで覆った菓子は、気温が上がると形が崩れます。溶ける温度は体温より低く、その仕組みはチョコレートが溶ける温度は何度?にまとめました。
細長い形は、この点で不利に働きます。表面積が大きく、中身が少ないので、熱の影響を受けやすくなります。
夏に流通させるには、冷蔵の仕組みが必要になります。低価格の駄菓子にその負担をかけるのは難しい。季節を区切るという判断は、価格と構造から出てきたものだと考えられます。
形が名前を決めている
この菓子の名前は、形から来ています。バットです。
細長い棒状にすれば、自然とバットに似ます。そこへ野球の用語を当たりに使えば、商品全体がひとつの世界観で揃います。
形から名前を取った菓子はほかにもあります。チョコレートサラミ レシピで扱った菓子は、切った断面がサラミに似ていることから名付けられました。チョコQ助の「Q助」は割れた煎餅のことは、割れた煎餅という素材そのものが名前になっています。
形と名前と当たりが同じ主題で揃っているという点で、チョコバットの設計は徹底しています。
六十年続いた理由
まとめると、この菓子は変えなかったことで残った例に見えます。
1964年に発売され、パン生地にチョコレートをかけるという構造を保ち、野球にちなんだ当たりを続けている。駄菓子という価格帯も動かしていません。
構造が単純なものは、変える理由も生まれにくい。材料が複雑でなく、形も名前も当たりも噛み合っている商品は、手を入れる余地が少なくなります。
逆に言えば、変えられない商品でもあります。味の種類を増やそうとしても、細長いパン生地という土台では展開の幅が限られます。パイの実の64層のように中身を入れ替えられる構造とは、この点で違います。
次に売り場で見かけたら、包み紙の裏を見てみてください。そして原材料表示のパン酵母という文字を探してみてください。チョコレート菓子の棚に、パンが置かれています。
参考文献
※当たりの仕組みや販売期間は商品や時期によって異なります。最新の情報はメーカーの公式サイトでご確認ください。
