ニュージーランドのチョコレートというと、名前が浮かぶ人は少ないはずです。スイスやベルギーのようには知られていません。
ただこの国には、1896年創業で、いまも創業家が所有しているブランドがあります。そして国内では、スイスやベルギーの大手を上回る存在感を持っています。
1896年、クライストチャーチで創業
ニュージーランドで最大のチョコレートブランドはウィタカーズです。
百科事典によれば、「ジェームズ・ヘンリー・ウィタカー(1868〜1947)が1896年にクライストチャーチで事業を始めた」とされています。
本社は現在ポリルアにあります。ウェリントン近郊の都市で、創業地のクライストチャーチからは島をまたいだ場所にあたります。
創業から百三十年近くたっていますが、「所有者:ウィタカー家」と記されており、いまも家族が所有しています。上場企業でも多国籍企業の傘下でもありません。
国内で最大のブランド
規模についても記述があります。「ウィタカーズはニュージーランドで最大のチョコレートブランドである」とされています。
自国のブランドが国内首位という状況は、実はそれほど多くありません。多くの国では、スイスやアメリカの大手が売り場の中心を占めます。
同じ構図を持つ国としては、ポーランドのヴェデルが挙げられます。ただしあちらは所有者が何度も変わり、2010年に韓国のロッテの傘下に入りました。経緯はポーランドのチョコレートで扱いました。
ウィタカーズは、国内首位でありながら家族経営を維持しているという点で珍しい位置にあります。ブランドの国籍と会社の国籍が分かれていく流れについてはトルコのチョコレートでも触れました。
12年連続で最も信頼されたブランド
評価についても数字があります。
百科事典には、「2012年から2023年まで、ウィタカーズはニュージーランドで最も信頼されるブランドに選ばれた」と記されています。
12年連続です。しかもチョコレートのブランドとしてではなく、全業種を通じての評価だとされています。銀行や通信、小売なども含めた中での首位ということになります。
信頼という指標は味の評価とは別のものです。長く同じ家族が作り続けていること、品質が安定していることが効いていると考えられます。
菓子メーカーが全業種で首位になるのは、日常的に手に取られる商品だからでもあります。年に一度しか買わないものは、信頼を問われる機会そのものが少なくなります。
豆から板チョコまで自社で行う
製造の体制にも特徴があります。
百科事典は、「同社はポリルアの自社施設で製造工程の全体を管理しており、自らを『bean-to-bar』の製造者と位置づけている」と記しています。
豆から板チョコまでを一貫して行うという方式です。考え方そのものはBean to Barチョコレートとは?にまとめました。
注意したいのは、この言葉が小規模な工房を指す文脈で使われることが多いという点です。日本では数人規模の工房がこの看板を掲げています。一方でウィタカーズは国内最大のブランドです。
| 小規模な工房 | ウィタカーズ | |
|---|---|---|
| 規模 | 数人から数十人 | 国内最大のブランド |
| 一貫製造の意味 | 味を細かく作り込む | 品質を安定させる |
| 価格帯 | 高め | 日常の価格帯 |
規模が大きくても一貫製造は成り立つということになります。言葉の使われ方と実態がずれる例です。
家族経営が続いていることの意味
百三十年近く同じ家族が所有しているという点は、商品の性格に関わってきます。
短期の利益を求める株主がいません。上場企業であれば、四半期ごとの業績が判断の対象になります。原料を安いものに替える、内容量を減らすといった判断が働きやすくなります。
一方で、家族経営には別の難しさもあります。設備投資の資金を自力で用意する必要があります。豆から板チョコまでを自社で行う体制は設備を要するので、規模を拡大するたびに負担が増えます。
それでも国内最大のブランドであり続けているのは、輸出に大きく依存せず、国内で完結する規模を維持してきたからだと考えられます。
所有者が変わり続けた例と比べると、違いがはっきりします。ポーランドのヴェデルは1991年にペプシコ、1999年にキャドバリー、2010年にロッテへと移りました。経緯はポーランドのチョコレートにまとめました。ブランドは残りましたが、決める人は何度も入れ替わっています。
国内で完結する市場という条件
ニュージーランドの人口は日本よりはるかに少なく、市場の規模は限られます。それでも国内首位のブランドが成り立っているのは、その規模で採算が合う体制を作っているからです。
逆に言えば、国内市場が小さい国では、海外へ出るか、国内で小さくまとまるかの選択が早い段階で来ます。ウィタカーズは後者を選びながら最大になった例になります。
同じオセアニアでは、オーストラリアのティムタムが輸出で知られる形を取りました。こちらはオーストラリアのチョコ事情で扱っています。近い国でも、進む方向が違います。
ピーナッツスラブという定番
代表商品として挙げられているのがピーナッツスラブです。
百科事典によれば、「ピーナッツスラブは1950年代に考案された」もので、「ウィタカーズは1985年に輸出を開始した」とされています。
名前のとおり、ピーナッツをそのまま入れた板状のチョコレートです。七十年以上売られ続けている商品ということになります。
スラブという語は「厚板」を意味します。薄い板チョコではなく、厚みのある塊という形です。ナッツを入れるには、ある程度の厚さが必要になります。板チョコの重さの考え方は板チョコ1枚は何グラム?で扱いました。
ナッツとチョコレートの組み合わせは各国で定番になっています。ヘーゼルナッツを使うイタリアの例はイタリアチョコの特徴、ヘーゼルナッツのスプレッドはヌテラの魅力で扱いました。手に入りやすいナッツがその国の定番を決めるという傾向があります。
日本から買えるか
日本の売り場で見かける機会は限られています。
輸入食品店で扱われることがあり、常時置かれているとは言えません。通販で探すほうが確実な場合もあります。輸入品の傾向はカルディ チョコレートおすすめ20選、通販はチョコレートのお取り寄せ人気ランキングにまとめました。
現地で買うのがいちばん確実です。ニュージーランドでは一般的なスーパーに並んでいます。持ち帰る場合は気温と移動時間に注意が必要で、海外からの持ち帰りの考え方は海外旅行のチョコレートお土産完全ガイドで扱いました。
オセアニアの隣国の事情はオーストラリアのチョコ事情にまとめています。
知られていないことと品質は別
まとめると、ニュージーランドのチョコレートには日本での知名度と実態がずれているという特徴があります。
1896年創業、いまも家族経営、国内最大のブランド、12年連続で最も信頼される企業、そして豆から板チョコまでの一貫製造。どの条件も、名前が知られていないことと矛盾します。
理由は輸出の規模と流通です。国内で十分に売れているブランドは、無理に海外へ出る必要がありません。日本で見かけないのは、売る必要がなかったからだとも言えます。知名度は品質の指標ではないということになります。
国ごとのチョコレートの性格は世界のチョコレートを記事別に整理から辿れます。
参考文献
※商品の取り扱いや企業の状況は変わります。最新の情報は公式サイトでご確認ください。
