「リンツの工場見学に行きたい」と調べると、情報がうまく出てきません。理由は単純です。日本にリンツの工場がないからです。

見学できる施設はあります。ただし場所はスイスで、見られるものも一般に想像される製造ラインとは違います。順に整理します。

日本にリンツの工場はない

まず前提です。リンツはスイスの会社で、日本には販売の拠点と店舗があります。製造する工場は国内にありません。

したがって日本で工場見学を探しても見つかりません。国内で見学できるチョコレート工場は、明治、森永、ロッテといった国内メーカーのものです。全国の見学先はチョコレート工場見学スポットにまとめました。

日本でリンツに触れられるのは店舗です。直営店では量り売りがあり、カフェを併設した店舗もあります。商品の全体像はリンツ「リンドール」全種類フレーバー一覧で扱っています。

量り売りの形式は、ベルギーやイタリアの店で見られるものと同じ考え方です。好きな種類を自分で選んで重さで買う方式についてはヴェンキの量り売り利用ガイドでも触れました。

見学できるのはキルヒベルク

スイスにある施設の名前はリンツ ホーム オブ チョコレートです。

公式サイトに所在地が記されています。「Schokoladenplatz 1, 8802 Kilchberg, Switzerland」です。キルヒベルクはチューリッヒ湖の西岸にある町で、チューリッヒ市街から近い位置にあります。

リンツの本社があるのがこのキルヒベルクで、施設は本社の隣に建っています。

9メートルを超えるチョコレートの噴水

この施設でもっとも知られているのが、入ってすぐの吹き抜けにある噴水です。

公式サイトは「高さ9メートルを超え、1,500キログラムのチョコレートが流れている」と説明しています。

1.5トンのチョコレートが循環していることになります。板チョコ50グラム換算で3万枚分です。チョコレートが流れる状態を保つには温度の管理が要ります。溶ける温度の性質はチョコレートが溶ける温度は何度?にまとめました。

見られるのは「パイロットプラント」

ここが重要な点です。実際の製造ラインを見学する施設ではありません。

公式サイトの説明では、来場者は「当社の最新の試験設備でチョコレートの製造工程を追うことができる」とされ、パイロットプラントという言葉が使われています。

パイロットプラントとは、本格生産の前に小規模で試作・検証を行う設備のことです。つまり生産そのものではなく、工程を見せるために用意された設備を見ることになります。

一般的な工場見学の期待 この施設で見られるもの
実際の生産ラインが動いている 試験設備(パイロットプラント)
流れていく製品を見る 工程の仕組みを追う
工場の規模を体感する 展示として構成されている

これは欠点ではありません。本当の生産ラインは衛生管理と安全の都合で一般公開しにくく、多くのメーカーがガラス越しの通路や展示に切り替えています。工程そのものはチョコレートができるまでにまとめました。

博物館としての展示

施設は博物館の性格が強くなっています。

公式サイトは「インタラクティブな発見の旅」と表現し、「チョコレートの起源にさかのぼり、カカオがどのようにヨーロッパを征服したかを体験できる」とし、スイスのチョコレートの先駆者たちに出会えるとしています。

カカオがヨーロッパへ渡った経緯はチョコレートの歴史で、スイスがミルクチョコレートの発祥地になった理由はスイスチョコの特徴で扱いました。展示の筋立ては、この二つの話に重なります。

世界最大の店舗とカフェ

買い物と食事もできます。

公式サイトは併設の店舗を「世界最大のチョコレートショップ」とし、500平方メートルを超える広さだとしています。オリジナルのプラリネを設計したり、マスターショコラティエに作ってもらうこともできるとされています。

カフェについては、「人気のワッフルは焼きたてで、当社の最高級のチョコレートで特別に仕上げられている」という記述があります。

世界の見学施設や博物館の並びは世界のチョコレート博物館・工場見学スポット7選にまとめました。

行く前に決めておくこと

訪れる場合に押さえておく点を挙げます。

場所。チューリッヒ市街からキルヒベルクへ移動します。電車やバスで行ける距離です。

何を期待するか。生産ラインを見たいのであれば、期待と違う可能性があります。歴史の展示と、巨大な噴水と、世界最大の売り場が中心です。

持ち帰りの温度。店舗で買ったものを日本まで持ち帰るなら、気温と移動時間を考える必要があります。海外からの持ち帰りの注意は海外旅行のチョコレートお土産完全ガイドにまとめています。

日本で近いものを探すなら

リンツの工場見学が日本にない以上、代わりになる選択肢を挙げておきます。

国内メーカーの工場見学はチョコレート工場見学スポットに、体験型の施設はフェリシモ チョコレートミュージアムにまとめました。

小規模な作り手の工房を見るという方向もあります。豆から板チョコまでを一貫して行う工房は見学や説明に応じる場合があり、たぶん世界一小さいチョコレート工場で扱った例があります。考え方そのものはBean to Barチョコレートとは?にまとめています。

世界の作り手が集まる催事に行けば、複数のブランドの話を一度に聞けます。サロン・デュ・ショコラとはで扱いました。

よくある質問

Q. リンツの工場見学は日本のどこでできますか。 できません。日本国内にリンツの工場がないためです。国内で見学できるのは明治、森永、ロッテなど国内メーカーの施設になります。一覧はチョコレート工場見学スポットにまとめました。

Q. スイスの施設は予約が必要ですか。 日時指定の入場券が設けられている場合があります。内容や運用は変わるため、訪問前に公式サイトで確認してください。

Q. 本当の製造ラインは見られますか。 公式サイトの説明では、見学できるのは「最新の試験設備」であり、パイロットプラントという位置づけです。本格生産のラインを見る施設ではありません。

Q. 日本のリンツの店舗で工場のような体験はできますか。 直営店では量り売りがあり、カフェを併設した店舗もあります。ただし製造の見学とは別のものです。商品の種類はリンツ「リンドール」全種類フレーバー一覧で扱いました。

Q. リンツの工場見学の代わりになる場所はありますか。 豆から板チョコまでを一貫して行う小規模な工房が近い体験になります。たぶん世界一小さいチョコレート工場で扱った例があります。

数字で見る施設

公式サイトに出ている数字をまとめます。

項目 内容
所在地 Schokoladenplatz 1, 8802 Kilchberg, Switzerland
チョコレートの噴水 高さ9メートル超、1,500キログラムが流れる
店舗の広さ 500平方メートル超、世界最大のチョコレートショップ
見学できる設備 最新の試験設備(パイロットプラント)

1,500キログラムという量が、この施設の性格をよく表しています。見せるために用意された規模であって、生産のための設備ではありません。

噴水を保つには、チョコレートを流れる状態に維持し続ける必要があります。固まらせず、焦がさず、分離させない温度の幅は広くありません。展示そのものが技術の見せ場になっていることになります。温度の性質は「テンパリング」とは?でも扱いました。

探しても見つからない理由

まとめると、答えは単純です。リンツの工場見学は日本にありません。国内に工場がないからです。

見学できるのはスイスのキルヒベルクにある「リンツ ホーム オブ チョコレート」で、9メートルを超えるチョコレートの噴水と、世界最大の店舗があります。ただし見られるのは試験設備で、実際の生産ラインではありません。

日本で工程を見たいなら、国内メーカーの見学施設のほうが目的に合います。同じ「工場見学」という言葉でも、施設によって見られるものが違うということになります。

参考文献

※施設の内容、営業時間、予約の要否は変更されることがあります。訪問前に公式サイトでご確認ください。