小さな丸いパンの中に、チョコレートが入っている。ブルボンのチョコあ~んぱんは、そういう菓子です。検索では「チョコあーんぱん」と書かれることも多いですが、公式の表記は波線を使った「あ~んぱん」です。
名前のとおり、あんパンを模した菓子に見えます。ただ原材料表示を見ると、見立てだけの商品ではないことが分かります。
1986年、ブルボンから
発売は1986年です。ブルボンの発表資料にも、この年から「あんぱんおじさん」のデザインとともに販売されてきたと記されています。
四十年近く売られ続けている商品ということになります。ブルボンのチョコレート菓子は種類が多く、その中でもこの商品は形の珍しさで知られています。
公式の商品説明は「ソフトなチョコレートを中に詰めた可愛いひとくちサイズのパンです」というものです。菓子ではなく「パン」と書かれている点に注目してください。
原材料にイーストが入っている
言葉の見立てで終わっていないことは、原材料表示を見れば分かります。
公式に記載されている原材料名には、小麦粉、砂糖、ショートニング、カカオマス、全粉乳などに続いて、イーストが並んでいます。さらにイーストフードも入っています。
イーストはパン生地を発酵させるために使うものです。つまりこの生地は、パンの形を真似た焼き菓子ではなく、実際に発酵させたパン生地だということになります。
| 見立てだけの菓子 | この商品 | |
|---|---|---|
| 生地 | ビスケット生地など | イーストで発酵させた生地 |
| 表示上の呼び方 | 焼き菓子 | 「パン」と書かれている |
| 原材料の手がかり | 膨脹剤 | イースト、イーストフード |
膨脹剤で膨らませる菓子と、イーストで発酵させるパンは、作り方が別のものです。時間のかかる方を選んでいるわけです。
チョコレートとパンの組み合わせについてはチョココロネはどっちから食べるかでも扱いました。日本にはこの組み合わせの歴史があります。
表面の粒は、うるちひえパフ
もうひとつ原材料表示から分かることがあります。うるちひえパフが入っている点です。
ひえは雑穀の一種で、それをパフ状にしたものが表面に付いています。実物を見ると、上面に細かい粒が散っているのが確認できます。
あんパンの表面には、ケシの実や白ごまが振られることがあります。この粒が、その見た目に近い役割を果たしています。もっとも、公式がその目的を明言しているわけではないので、ここは見た目からの推測です。
粒があることで、噛んだときの手応えにも変化が出ます。生地が柔らかいぶん、表面に固いものがあると印象が締まります。
夏場でも手を汚さない
公式の商品説明には、構造の狙いがはっきり書かれています。
「チョコレートを生地に入れているので、夏場でも手を汚さずに食べられます。」
チョコレートは体温より低い温度で溶け始めます。この性質はチョコレートが溶ける温度は何度?にまとめました。表面に塗った商品は、持っているだけで指に移ります。
生地の内側に入れてしまえば、外側が壁になります。溶けても外には出てこないので、手も包みも汚れません。
同じ考え方の商品は少なくありません。パイの実の64層やチョコリエールはなぜ長く売れているのかでも、外側で形を保ち内側で味を出す構造を扱いました。チョコレートを隠すことが、扱いやすさに直結します。
公式はさらに「コクのあるチョコレートと香ばしいパンの風味の相性が良く、スナック感覚でパクパク食べられます」と続けています。手が汚れないことと、続けて食べられることは、同じ設計から出ています。
「あんぱんおじさん」というキャラクター
パッケージには、コック帽をかぶった人物が描かれています。あんぱんおじさんです。
ブルボンの公式サイトは、この人物を「お菓子作りが大好きなパン屋さん。パパのように、皆を笑顔にする料理(パン)を作れるよう、日夜、努力中。」と紹介しています。
菓子の名前にキャラクターが付くと、商品は覚えられやすくなります。絵柄を主役にした例としてはコアラのマーチがありますが、こちらは一人の人物を固定して置く方式です。
絵柄を増やして当たりを作るのか、一人を続けて顔にするのか。どちらも菓子を記憶に残す方法ですが、狙いが違います。
あんパンという原型
そもそも、なぜあんパンを選んだのでしょうか。
あんパンは日本で生まれたパンで、どこの店にも並んでいる定番です。誰でも形を知っているという点が、この題材の強みになります。説明しなくても、何を模したものかが伝わります。
しかも中身は差し替えられます。あんこの代わりにチョコレートを入れる、という発想は、形の知名度を借りて中身を変えるやり方です。
| あんパン | この菓子 | |
|---|---|---|
| 大きさ | 手のひらほど | ひとくちサイズ |
| 中身 | あんこ | チョコレート |
| 買う場所 | パン屋・スーパー | 菓子売り場 |
大きさと中身と売り場を全部変えて、形と名前だけを残した。そう整理すると、この商品の設計がはっきりします。
ひとくちサイズであること
小さいことにも理由があります。パンを菓子の棚に置くための工夫だと考えられます。
普通の大きさのパンは日持ちが短く、常温での流通に向きません。小さく焼いて水分を減らせば、菓子と同じ扱いができます。内容量は40グラムで、袋入りの商品として売られています。
量を測るときの感覚については板チョコ1枚は何グラム?で扱いました。40グラムという数字は、板チョコ1枚よりやや少ない量にあたります。
小さいことで、食べる場面も広がります。袋から一つずつ取れるので、手を止めずに食べ進められます。
原材料をもう少し読む
表示を読み進めると、ほかにも分かることがあります。
カカオマスと全粉乳が入っています。カカオマスはチョコレートの中心になる成分で、それぞれの役割はカカオマス・ココアバター・ココアパウダーの違いとは?にまとめました。全粉乳が入っているので、中身はミルクチョコレートの系統だと読めます。
液全卵と液卵白もあります。パン生地に卵を使うと、色づきと風味が変わります。菓子パンの生地に近い配合ということになります。
洋酒という表記もあります。これは香りづけに使われるもので、洋菓子では一般的な材料です。量はごくわずかですが、気になる場合は表示を確認してください。洋酒を主役にした菓子についてはロッテ ラミーとバッカスの違いで扱いました。
一つの小さな菓子に、パンの材料とチョコレートの材料が両方入っている。表示が長いのは、二種類の菓子を重ねているからです。
「パクパク食べられる」という設計
公式の説明にある「スナック感覚でパクパク食べられます」という言い方は、この商品の性格をよく表しています。
一つが小さく、手が汚れず、袋から次を取れる。止まる理由がどこにもない構造です。板状の菓子なら割る動作が区切りになりますが、ここにはそれがありません。
食べる量を意識したい場合は、先に取り分けておくほうが確実です。種類別のカロリーはチョコレートのカロリー一覧にまとめました。
食べやすさは長所ですが、量の目安が見えにくくなるという面もあります。内容量40グラムという数字を先に見ておくと、判断しやすくなります。
表記のこと
最後に、名前の書き方について触れておきます。
公式の表記は「チョコあ~んぱん」で、「あ」と「ん」のあいだに波線が入ります。検索では「チョコあーんぱん」と長音符で書かれることも多く、どちらでも同じ商品を指しています。
商品名の表記が揺れるのは珍しくありません。探すときは、どちらの書き方でも出てくると思っておけば十分です。
次に手に取ったら、原材料表示のイーストという文字を探してみてください。パンの見立てではなく、本当にパンだったということが、その一語で分かります。
参考文献
※商品の仕様、原材料、内容量は変更されることがあります。最新の情報はメーカーの公式サイトでご確認ください。
