手作りのチョコレートを送る。お取り寄せしたものを人に転送する。チョコレートの郵送は、気温によって難しさが大きく変わります。

そしてチョコレートの郵送でいちばん多い勘違いが、クール便の仕組みについてのものです。

そして多くの人が誤解していることがあります。クール便には、荷物を冷やす機能がありません。

クール便は「冷やす」サービスではない

ヤマト運輸の案内には、はっきりこう書かれています。

「保冷輸送(温度を保つ)サービスです。お荷物を冷やしたり凍らせたりする冷却機能はありません。」

つまり常温のものを預けても、冷たくはなりません。預けた時点の温度をおおよそ保つ仕組みです。

ここを取り違えると、溶けた状態のまま届くことになります。チョコレートが溶け始める温度は体温より低く、その性質はチョコレートが溶ける温度は何度?にまとめました。

預ける前に冷やしておく必要がある

冷却機能がないので、送る側が冷やしておく必要があります。これを予冷といいます。

同じ案内には、必要な予冷の条件が示されています。

タイプ 温度帯 必要な予冷
冷蔵 0〜10℃ 10℃以下で6時間以上
冷凍 -15℃以下 -15℃以下で12時間以上

冷蔵タイプなら6時間以上、冷凍タイプなら12時間以上あらかじめ冷やしておくことが前提になっています。

作った直後のものをその日に発送する、という段取りは成り立ちません。前日に作って冷やしておく必要があります。作る工程から逆算する話になります。

そもそもクール便が要るのか

ただし、チョコレートに常にクール便が必要なわけではありません。

チョコレートは本来、常温で流通する食品です。製品として売られている板チョコや箱入りのものは、常温の配送を前提に作られています。保存の考え方はチョコレートの正しい保存方法にまとめました。

問題になるのは気温です。

時期 常温配送 判断の目安
冬(12〜3月) ほぼ問題ない 暖房の効いた室内への配達に注意
春秋(4〜5月、10〜11月) 日による 最高気温が25℃を超える日は注意
夏(6〜9月) 難しい クール便か、発送を避ける

夏場は常温では溶けます。配送車の中も、受け取り前の玄関先も、気温より高くなることがあります。

見落としやすいのが冬場の暖房です。気温が低い時期でも、配達先の室内が暖かければ届いてから溶けます。マンションの共用部に宅配ボックスがある場合、そこが暖かいこともあります。外気温だけで判断すると外します。

冷やすと別の問題が出る

冷やせば解決、という話でもありません。冷蔵庫から出したときに結露します。

冷たいチョコレートを暖かい場所に出すと、表面に水滴が付きます。水分が付いたチョコレートは、乾いたあとに白く粉をふいたようになることがあります。この現象そのものは「ブルーム現象」とは?で扱いました。

受け取った人がすぐに開けて室温に戻してしまうと、これが起きます。冷蔵で送る場合は、受け取ったら冷蔵庫に入れ、食べる少し前に出すよう伝えておくほうが確実です。

送る側の工夫だけでは完結しません。受け取る側の扱いまで含めて考える必要があります。

日持ちで送れるものが変わる

送るものによって、そもそも可否が変わります。

生クリームを使ったものは日持ちが短く、郵送には向きません。ガナッシュや生チョコがこれにあたります。配合による違いはガナッシュ・生チョコ・トリュフの違いにまとめました。

焼き菓子は水分が少なく、比較的送りやすくなります。ブラウニーやクッキーの類です。作り方はチョコレートの作り方を記事別に整理から辿れます。

市販の製品は、常温流通を前提に作られているので扱いやすくなります。箱と個包装が輸送を想定した作りになっているためです。

一方で溶けやすさは種類によって違います。カカオ分の高いものほど油脂の割合が高く、やわらかくなりやすい傾向があります。種類ごとの性格はチョコレートの種類完全ガイドにまとめました。

手作りのものを送る場合は、日持ちを短く見積もってください。市販品の賞味期限は工場の衛生管理と包装を前提にした数字で、家庭で作ったものには当てはまりません。

包み方で守れる範囲

包装も効きます。ただし限界があります。

個包装にしておくと、形が崩れても他に影響しません。溶けて隣のものに付くのを防げますし、受け取った側が配りやすくもなります。

箱の中で動かないように詰めること。輸送中の振動で崩れるのは、温度とは別の問題です。隙間を埋めるだけで防げます。緩衝材がなければ、丸めた紙でも足ります。

保冷剤を入れるなら、直接触れないようにすること。チョコレートに接すると結露します。紙や布を一枚挟むだけで変わります。

包み方の考え方はチョコレートのラッピングにまとめました。油脂と温度から考えるという点は、郵送でも同じです。

アイスクリームは扱えないことがある

参考になる記述がもうひとつあります。アイスクリームについてです。

ヤマト運輸の案内には、アイスクリームは「クール宅急便の冷凍タイプが提供する温度帯より低温での管理が必要なため」取り扱いできない場合があると記されています。送る場合は発泡スチロールを使い、十分なドライアイスを詰めることが求められ、60サイズでドライアイス2キログラムが目安として示されています。

これはチョコレートの郵送を考えるときの手がかりになります。宅配の冷凍は-15℃以下だが、それでも足りないものがある。配送の温度帯には限りがあるということです。

逆に言えば、チョコレートは冷蔵タイプの0〜10℃で足りる食品です。過剰に冷やす必要はありません。冷やしすぎると結露の問題が出ます。冷やして食べる場合の注意は冷やして食べるチョコレートで扱いました。

チョコレートの郵送と持ち運びは別の問題

手で持ち運ぶ場合と、郵送する場合では条件が違います。

持ち運びは時間が短く、自分で管理できます。保冷バッグに入れて一時間なら、たいていは問題ありません。

郵送は時間が長く、途中を管理できません。集荷から配達まで一日以上かかり、その間の温度は見えません。再配達になればさらに延びます。

持ち運び 郵送
かかる時間 数十分〜数時間 一日以上
途中の温度 自分で管理できる 見えない
遅延の可能性 ほぼない 不在、天候などで起きる

チョコレートの郵送で気をつけるべきは、最長でどれだけかかるかです。順調に届く前提で組むと、遅れた場合に対応できません。

送る前に確認する四点

まとめると、確認すべきことは四つです。

時期。最高気温が何度になるか。夏場なら発送そのものを見直す判断もあります。

中身。水分の多いものか、焼き菓子か、市販品か。日持ちがどれだけあるか。

相手の受け取り方。すぐ受け取れるか、不在票になるか。玄関先に置かれる可能性があるなら、夏場は危険です。

到着後の扱い。冷蔵で送るなら、受け取ったらどうするかを伝えておきます。

贈答として送る場合の全体的な考え方はチョコレート詰め合わせの選び方と手土産に喜ばれるチョコレートにまとめました。

冷やす前提ではなく、溶けない前提で選ぶ

最後にひとつ考え方を挙げます。溶けにくいものを選ぶという手があります。

砂糖やビスケットの割合が高い菓子は、油脂の塊である板チョコより形を保ちます。土産物として強い菓子の条件はチョコレートクランチはなぜ土産の定番なのかで扱いました。常温で運べることを前提に設計された商品があります。

どうしても溶けやすいものを送りたい場合は、時期を選ぶのが最も確実です。冬であれば、多くの問題は起きません。贈る時期の全体像はチョコレートを贈る時期にまとめています。

送る前に一度、天気予報の最高気温を見てください。それがいちばん確実な判断材料です。

参考文献

※配送サービスの仕様や料金は変更されることがあります。最新の情報は各配送事業者の公式サイトでご確認ください。