手作りのチョコレートを渡すとき、最後に立ちはだかるのが包み方です。中身は上手にできたのに、開けてもらったときに崩れていた、くっついていた、匂いがついていた。そういう失敗は、たいてい包む素材の選び方で起きています。
チョコレートのラッピングが難しいのは、見た目を整えるだけの作業ではないからです。油脂を含み、匂いを吸い、温度に弱い。この三つの性質を扱う必要があります。
まず知っておきたい三つの性質
チョコレートのラッピングを考える前に、相手の性質を押さえておきます。ここを外すと、どんなに凝った包装をしても中身が損なわれます。
油脂が染みる。チョコレートは脂肪分が多く、紙に直接触れると油が移ります。時間が経つと包み紙に染みが浮き、見た目が悪くなります。とくに生チョコやトリュフは水分も油脂も多く、影響が出やすいものです。
匂いを吸う。油脂は周囲の匂いを取り込みます。香りの強い紙やインク、匂いのある収納場所は避ける必要があります。せっかくのカカオの香りが、包装の匂いに負けてしまいます。
温度で形が変わる。ココアバターは体温よりわずかに低い温度で溶けます。手で長く持つ、日の当たる場所に置く、暖房の近くに置く。それだけで表面が緩みます。この性質についてはチョコレートが溶ける温度は何度?で詳しく扱っています。
素材は二層で考える
以上を踏まえると、方針は単純になります。中身に直接触れる層と、外側の見せる層を分ける。この二層構造にすれば、ほとんどの問題は解けます。
| 層 | 役割 | 向いている素材 |
|---|---|---|
| 内側 | 油脂を止める・くっつきを防ぐ | グラシン紙、ワックスペーパー、クッキングシート、アルミカップ |
| 外側 | 見た目を作る・持ち運ぶ | 紙箱、透明袋、麻紐、リボン、ワックスペーパー |
内側に油を通しにくい紙を一枚入れるだけで、外側の見た目が最後まで保たれます。手間のかかる装飾より、この一枚のほうが仕上がりを左右します。
透明の袋を使う場合も、底にグラシン紙を敷いておくと安心です。袋に直接入れると、底に油が溜まって曇ることがあります。
形ごとの包み方
チョコレートのラッピングは、形によって注意点が変わります。弱点が違うためです。
生チョコ
もっとも扱いにくい相手です。四角く切った面がやわらかく、重ねると互いにくっつきます。
一粒ずつ仕切るのが基本です。小さなアルミカップやグラシンのケースに入れて並べれば、触れ合いません。ココアパウダーがかかっているものは、粉が落ちて周囲を汚すので、浅い箱に並べて動かないようにします。
保冷を前提にすることも忘れないでください。生チョコは日持ちが短く、常温で長時間持ち歩く前提の包装は向きません。日持ちの目安は「ガナッシュ」とは?生チョコとの違いを解説にまとめています。
トリュフ
丸い形は転がるため、動かない仕組みが必要です。仕切りのある箱か、一粒ずつ包んでから袋に入れる方法が向きます。
一粒ずつ包むなら、アルミ箔やワックスペーパーで包んで両端をひねる、キャンディ包みが手軽です。見た目にも動きが出て、市販品らしい印象になります。
板状・型抜き
薄いものは割れが敵です。厚紙を一枚添えて、袋の中で曲がらないようにします。
型抜きしたものを重ねる場合は、間にシートを挟んでください。重みで下のものに跡がつきます。
100円ショップで揃うもの
専門店に行かなくても、必要なものはほぼ手に入ります。季節が近づくと売り場が拡張されるので、時期を選べば選択肢も増えます。
- グラシン紙・ワックスペーパー:内側の層に使う
- アルミカップ・グラシンケース:一粒ずつ仕切る
- 透明袋(OPP袋):見せたいときに
- 小さな紙箱・缶:形を守りたいときに
- 麻紐・リボン・シール:仕上げに
買い足す前に、まず内側の一枚を確保することをおすすめします。装飾を増やすより効果が大きいためです。
避けたほうがよい素材
見た目がよくても、チョコレートには向かない組み合わせがあります。
匂いの強い紙や木箱。香りが移ります。とくに新しい木の箱は独特の匂いを持つことがあります。
インクが直接触れる面。印刷面が中身に接する包み方は避けてください。
密閉しすぎる容器。冷やしたものを密閉して常温に出すと、内部で結露します。表面が濡れると白く粉をふいたような状態になります。これは「ブルーム現象」とは?で扱っている現象と近い見え方をします。
保冷剤の直置き。溶けた水が包装を濡らします。保冷剤を使う場合は、袋に入れて中身と直接触れないようにしてください。
渡すまでの時間を設計する
チョコレートのラッピングでもっとも見落とされるのが、包んでから渡すまでの時間です。
包装は完成した瞬間がいちばんきれいで、そこから状態は落ちていきます。前日に仕上げて室温に置いておけば、翌日には油が染み始めます。渡す日に近づけて包むのが原則です。
持ち運びの時間も考えてください。夏場でなくても、暖房の効いた室内やかばんの中は思ったより温度が上がります。移動が長い場合は、保冷バッグを使うか、常温に強い焼き菓子を選ぶという判断もあります。
季節ごとの温度の考え方はチョコレートの正しい保存方法を参照してください。
市販品を包み直すとき
手作りではなく、買ったチョコレートを包み直す場面もあります。この場合は考え方が少し変わります。
すでに個包装されているものは、その包装を活かすのが基本です。メーカーの個包装は油脂と湿気を止める設計になっており、これを外して裸で並べると状態が落ちます。外箱だけを替えて、中の個包装はそのまま使ってください。
一方で、大袋で売られているものを小分けにする場合は、手作りと同じ配慮が必要です。裸のまま透明袋に入れると、袋の内側に油が回って曇ります。ここでもグラシン紙が効きます。
箱を替えるときに気をつけたいのが、原材料やアレルギー表示の情報が失われることです。贈る相手にアレルギーの心配がある場合は、パッケージの一部を残すか、口頭で伝えるようにしてください。チョコレートのアレルギーは乳成分やナッツ由来のことが多く、判断が難しい領域です。チョコレートアレルギーの症状と原因にまとめてあります。
数はどう決めるか
包み方が決まったら、次に迷うのが個数です。ここには実用的な目安があります。
渡す相手が一人なら、その人が数日で食べきれる量にとどめるのが親切です。生チョコのように日持ちしないものを大量に渡すと、相手に消費の負担がかかります。作った量を全部詰めたくなりますが、分けて渡すほうが喜ばれます。
職場などで複数人に配るなら、一人あたり2〜3個の小袋を数多く作るほうが扱いやすくなります。大きな箱をひとつ置くより、各自が持ち帰れる形のほうが衛生的で、余りも出にくいものです。
避けたいのは、数が足りるか分からない状態で一つの箱に詰めることです。取り分ける道具が必要になり、その場が煩雑になります。渡す場面まで想像して個数を決めてください。
贈る場面ごとの選び方はチョコレートギフトの選び方にも整理があります。
手が込んでいることより、状態がよいこと
凝った装飾は目を引きますが、開けたときに中身が崩れていれば台無しです。逆に、簡素な包みでも中身がきれいなら、丁寧に扱われたことは伝わります。
グラシン紙を一枚敷く、一粒ずつ仕切る、渡す直前に包む。地味な手順ですが、この三つを守るだけで仕上がりは変わります。
包装は中身を守るための仕組みであって、飾りが本体ではありません。そう考えると、何を選ぶべきかは見えてきます。
参考情報
※包装資材の取り扱いや在庫は店舗によって異なります。手作りしたものを贈る場合は、日持ちの目安を伝えたうえで、早めに食べていただくようお願いするのが安心です。
