チョコレート専門の工場に、直売所が併設されている。しかもその店は、水木金土しか開いておらず、夏は休みます。

兵庫県伊丹市にあるマシューのチョコレート工場直売所です。営業日の少なさだけを見ると不便に思えますが、この形は、チョコレートという食べ物の性質を素直に反映したものでもあります。

兵庫県伊丹市にある工場直売所

運営しているのは有限会社マシューのチョコレートで、所在地は兵庫県伊丹市口酒井です。会社の本社と工場、そして直売所が同じ場所にあります。

公式には「チョコレート専門の工場直売所」と紹介されており、大小さまざまなサイズから多種多様な商品を品揃えしているとされています。作っている場所のすぐ横で、作ったものを売る。流通を挟まないぶん、工場直売の価格で並びます。

小売店に卸すのが本業であれば、直売所は副次的な売り場です。けれど買う側からすれば、普段は業務用の袋でしか見かけないような商品を、直接手に取れる場所になります。

営業は水木金土だけ、しかも夏は休み

この直売所の営業条件は、かなり限定されています。

項目 内容 訪ねるときに効いてくること
営業日 水・木・金・土曜日 週の前半は閉まっている
休業日 日・月・火曜日、および夏季 夏の旅行のついでには寄れない
営業時間 午前9時から午後5時 仕事帰りには間に合いにくい

週の半分以上が休みで、さらに夏はまとめて閉まります。一般的な小売店の感覚からすると、ずいぶん思い切った設定です。

ただ、これは店の都合というより、工場に併設された売り場だからでもあります。本業は製造であり、直売所はその横で開いている。製造の予定が優先されれば、売り場を開ける日は限られます。

工場直売という売り方

工場に併設された直売所は、普通の菓子店とは成り立ちが違います。

菓子メーカーの本業は、作ったものを卸すことです。問屋や小売店を通して全国へ届く。そのしくみの中では、作り手が客と直接顔を合わせる場面はほとんどありません。

直売所は、その流れの外側にあります。作った場所で、作ったものをそのまま売る。間に入る業者がいないぶん、工場直売の価格で並びます。

買う側にとっての利点は、価格だけではありません。普段は業務用の単位でしか流通しないような商品にも手が届きます。小売店の棚は限られているので、置ける種類には上限があります。直売所にはその制約がありません。公式が「大小さまざまなサイズから多種多様な商品を品揃え」と説明しているのは、この事情によるものでしょう。

なぜ夏に閉めるのか

もうひとつの疑問が、夏季の休業です。菓子店にとって夏は書き入れ時ではないのか、と思うかもしれません。チョコレートに関しては、事情が逆になります。

チョコレートの主な油脂であるココアバターは、25度あたりから急速に溶け始め、32〜33度付近でほぼ完全に溶ける性質を持っています。融点は一般的に33.8度とされています。つまり、真夏の室温はチョコレートにとって溶ける温度帯です。

店頭に並べれば形が崩れ、持ち帰る途中でさらに溶けます。冷蔵で運べば今度は表面に水滴がつき、白く変色する原因になります。夏はどう扱っても不利になるわけです。

温度との関係はチョコレートが溶ける温度は何度?で詳しく扱っています。夏季休業という判断は、無理に売って品質を落とすよりも、季節をひとつ空けるという選択だと読めます。

季節に合わせて商いの形を変えるのは、和菓子屋が夏に水菓子へ寄せるのと似た発想かもしれません。チョコレートの場合、それが「開けない」という形で表れています。

並んでいる商品の顔ぶれ

公式サイトには、扱っている商品が並んでいます。ミックスチョコ、フリーズドライ苺チョコ、柿の種チョコ、アーモンドチョコ、マシュマロチョコ、マカダミアチョコ、ビスケットチョコ、チョコレートボール、バナナチップチョコ、もなボールチョコ、麦チョコ、ナッツチョコ、チョコフレーク、フルーツチョコなどです。

顔ぶれを眺めると、ある共通点が見えてきます。どれも「何かにチョコレートをかけたもの」です。板チョコのようにチョコレートそのものを味わう商品ではなく、芯になる素材があって、それを覆う形が中心になっています。

この並びは、この会社の得意分野を示しているとも言えます。素材を変えれば商品が増えるという構造なので、種類が多くなるのも自然なことです。

なかには、単独で記事になるような定番も混じっています。醤油味のあられとチョコレートを合わせた柿の種チョコはなぜ合うのか、コーンフレークにチョコレートをまとわせたチョコフレークはなくなっていない、そしてチョコマシュマロはなぜ合うのかで扱った組み合わせ。工場直売所の棚は、チョコレート菓子の分類表のようになっています。

買ったあとの持ち帰り

直売所で買う場合、気をつけたいのが持ち帰りの時間です。

チョコレート菓子は、車内や日なたに置けば短時間でも状態が変わります。とくに大袋で買ったものは量が多いぶん、全体が温まると元に戻りません。涼しい時期の営業とはいえ、日中の車内は外気より高くなります。

保冷剤を用意する、買い物の最後に立ち寄る、直射日光を避ける。基本的なことですが、まとめ買いをするなら効いてきます。持ち帰ったあとの置き場所についてはチョコレートの正しい保存方法にまとめました。

冷蔵庫に入れれば安心というわけでもありません。取り出したときの温度差で表面に水滴がつき、白く変わることがあります。涼しい場所に常温で置くほうが、状態を保てる場合もあります。

行く前に確かめておきたいこと

訪ねる場合、いくつか押さえておくべき点があります。

まず営業日です。水木金土しか開いていないため、週の前半に行っても閉まっています。そして夏季は休業します。

次に営業時間です。午前9時から午後5時までで、夕方以降は開いていません。仕事帰りに立ち寄る形は取りにくくなります。

そして、これらの条件は変わる可能性があるという点です。営業日や休業期間は年によって見直されることがあります。出かける前に公式サイトで最新の案内を確認するのが確実です。

チョコレートの製造現場を見学できる施設についてはチョコレート工場見学スポットにまとめました。見学と直売では性格が違いますが、作っている場所に足を運ぶという点では共通しています。

開いている季節に行く

週に四日だけ、しかも秋から春にかけてだけ開く売り場。不便といえば不便ですが、チョコレートがいちばん扱いやすい季節にだけ店を開けていると考えると、筋は通っています。

夏に閉めるという判断は、売上を諦めることでもあります。それでもそうしている店があるという事実は、チョコレートが気温に対してどれだけ正直な食べ物かを示しています。

涼しくなってきたら、営業日を確かめて足を運んでみてください。板チョコとは違う、覆う側のチョコレート菓子が並んでいます。

工場の横で売られているものは、流通に乗る前の姿に近いとも言えます。きれいな箱に入る前の、袋のままの状態。そこにしかない手触りを求めて足を運ぶ人がいるのも、直売所という場所が残り続けている理由のひとつでしょう。

週に四日という営業日は、裏を返せば残りの三日が製造に充てられているということでもあります。売り場と作業場が同じ建物にある以上、どちらかを優先する日が必要になります。

参考文献

※営業日、営業時間、取扱商品は変更されることがあります。訪問前に公式サイトでご確認ください。