割ると、断面に小さな穴がびっしり並んでいる。エアロチョコレートは、その見た目と食感で知られる菓子です。

板チョコのように詰まっていないぶん、噛んだときの感触がまったく違います。同じチョコレートなのに、空気を入れるだけでここまで変わる。その仕組みと、日本での表示が「準チョコレート菓子」になっている理由を見ていきます。

1935年、イギリスで生まれた

エアロチョコレートを最初に売り出したのは、イギリスの菓子会社ロントリー・マッキントッシュです。発売は1935年でした。

その後、1988年にネスレブランドとなり、いまも販売が続いています。日本では2003年から、ネスレコンフェクショナリー(現在のネスレ日本)が発売しています。

九十年近く前に生まれた商品が、会社を変えながら残っている。気泡を入れるという発想が、それだけ長く支持されてきたことになります。

気泡が入ると、何が変わるのか

チョコレートの中に気泡を入れる。言葉にすると単純ですが、食べたときの印象は大きく変わります。

まず噛んだときの手応えです。詰まった板チョコは、割るときも噛むときも一定の抵抗があります。気泡が入っていると、その抵抗が途中で崩れます。歯が入った瞬間に構造が潰れる感覚があり、これが独特の軽さを生みます。

次に口の中での崩れ方です。固まりのまま溶けていくのではなく、まず泡の壁が壊れ、それから溶けていく。段階がひとつ増えることになります。

そして同じ大きさでも中身が少ないという点です。体積の一部が空気に置き換わっているので、見た目の大きさに対してチョコレートの量は減ります。ひと口が大きくても重く感じにくいのは、この構造によるものです。

板チョコ 気泡入りチョコ
断面 詰まっている 小さな穴が並ぶ
噛んだとき 一定の抵抗がある 途中で構造が崩れる
同じ体積あたり チョコレートが多い 空気のぶん少ない

日本では「準チョコレート菓子」

パッケージの裏を見ると、エアロチョコレートは準チョコレート菓子と表示されています。

日本には、チョコレートの表示について定めた規約があります。カカオ分やココアバターの量が基準を満たすかどうかで、「チョコレート」「準チョコレート」といった区分が分かれる仕組みです。詳しくは「チョコレート」と「準チョコレート」の違いにまとめました。

ここで大事なのは、この表示が品質の優劣を意味しないことです。基準を下回っているのは事実ですが、それは用途に合わせた設計の結果でもあります。

気泡を保つには、チョコレートの性質そのものが関わってきます。泡の壁を作り、冷えるまで形を保たせる必要がある。板チョコと同じ配合がそのまま最適とは限りません。構造のために配合を選んだ結果、区分が変わるということは起こりえます。

味の種類が多い

エアロチョコレートのもうひとつの特徴が、フレーバーの幅です。

日本で展開されてきたものだけでも、バナナ、メロン、ピーチ、抹茶きなこ、レモンソーダ風味、洋なし、ペパーミントなど、かなりの種類があります。果物から和素材まで、範囲が広いことが分かります。

これも構造と無関係ではないでしょう。気泡入りのチョコレートは、詰まった板チョコに比べてカカオの重みが前に出にくい形をしています。土台が軽いぶん、上に乗せる香りの選択肢が広がります。

濃いカカオの味を主役にする商品であれば、果物の香りを合わせるのは難しくなります。チョコレートの種類ごとの性格についてはチョコレートの種類完全ガイドで整理しました。

同じ大きさで比べるか、同じ重さで比べるか

気泡入りのチョコレートを語るとき、比べ方によって印象が変わります。

同じ大きさで並べれば、気泡入りのほうが軽く感じます。空気のぶん中身が少ないので、当然の結果です。ひと口が大きくても食べ疲れしにくいのは、この性質によるものです。

一方、同じ重さで比べると話は変わります。空気には重さがないので、同じ重さなら含まれるチョコレートの量はほぼ同じです。板チョコより体積が大きくなるだけで、食べている量そのものは変わりません。

「軽いからたくさん食べられる」という感覚は、大きさで比べたときの話だということになります。手に取ったときの大きさと、実際の中身の量がずれる。これは気泡入り商品に共通する特徴です。

数字で確かめたい場合は、パッケージの内容量を見るのが確実です。板チョコの重さの見方は板チョコ1枚は何グラム?にまとめました。

板チョコと食べ比べると分かること

違いをはっきり感じたいなら、並べて食べてみるのが早道です。

まず割るときの音が違います。詰まった板チョコはパキッと折れますが、気泡入りは鈍い音とともに崩れます。断面を見れば、その理由がそのまま見えます。

次に舌に乗せたときの広がり方です。板チョコは表面から少しずつ溶けていきますが、気泡入りは噛んだ時点で細かく砕け、口の中に散らばります。

そして後に残る印象です。同じカカオの風味でも、軽く散ったものと、塊のまま溶けたものでは、余韻の長さが変わります。どちらが良いという話ではなく、狙っている体験が違うということです。

一粒ずつ味わうタイプのチョコレートとの違いを知りたい場合はチョコレートの種類完全ガイドも参考になります。

空気を入れるという発想

菓子に空気を含ませる工夫は、ほかにもあります。メレンゲ、ホイップクリーム、マシュマロ。軽さを作るために空気を使うという考え方は、製菓では珍しくありません。

ただ、チョコレートでそれをやるのは条件が厳しくなります。チョコレートは冷えると固まる油脂の塊なので、泡を抱えたまま固める必要があります。固まる前に泡が抜ければ、ただの板チョコに戻ってしまいます。

チョコレートが固まる仕組みそのものはチョコレートができるまでで扱いました。溶けた状態と固まった状態のあいだに、泡を閉じ込める瞬間がある。その一点を押さえているのが、この商品の技術だと言えます。

気泡入りは、割って人に渡しにくい

細かいことですが、実際に食べていると気づく違いがあります。分けにくいのです。

板チョコには溝が入っていて、そこに沿って割れば同じ大きさの欠片になります。半分だけ食べて残すことも、人に渡すことも簡単です。この仕組みについては板チョコ1枚は何グラム?で触れました。

気泡入りのものは、断面が均一ではありません。力を入れた場所で崩れ、粉のような細かい欠片が出ます。きれいに二等分する、という作業には向きません。

だからこの種の商品は、はじめから小分けの包装で売られることが多くなります。ひと口ずつ個包装にする、あるいは一本を一人で食べる前提にする。形の性質が、売り方まで決めていることになります。

保管には少し気をつけたい

気泡入りのチョコレートは、温度の影響を受けやすい面があります。

いったん溶けて固まり直すと、内部の泡の構造は元に戻りません。詰まった板チョコであれば見た目が変わる程度で済みますが、こちらは食感そのものが失われます。この菓子の価値の中心が食感にある以上、これは小さくない損失です。

夏場の持ち運びや、日の当たる場所での保管は避けたほうが確実です。チョコレートと温度の関係はチョコレートが溶ける温度は何度?にまとめています。

穴が主役の菓子

チョコレート菓子の多くは、中身で勝負します。ナッツを入れる、クリームを挟む、ビスケットを重ねる。何かを足すことで違いを作ります。

エアロチョコレートが足したのは、何もない空間でした。材料を加えるのではなく、抜くことで別の食べ物にしている。九十年続いている理由は、この発想の単純さにあるのかもしれません。

次に手に取ったら、割って断面を見てみてください。そこに並んでいる穴が、この菓子のすべてです。

参考文献

※商品のラインナップや表示は変更されることがあります。最新の情報はメーカーの公式サイトでご確認ください。