南国リゾートのイメージが強いフィリピン。しかしこの国には、数百年にわたって受け継がれてきた独自のチョコレート文化が根づいていることをご存じでしょうか。

フィリピンの人々にとって、チョコレートは「食べる」だけでなく「飲む」もの。伝統的な「タブレア」と呼ばれるカカオの塊を溶かした温かい飲み物は、今も家庭の食卓で親しまれています。さらに近年は、世界的なコンクールで受賞するBean to Barブランドも登場し、フィリピン産カカオが国際的な注目を集めています。

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この記事では、フィリピンの伝統的な飲むチョコ「タブレア」から、カカオ文化の歴史、一大産地ダバオ、そして世界が注目するクラフトチョコまで、意外と奥深いフィリピンのチョコレートの世界を紹介します。

伝統の飲むチョコ「タブレア」

フィリピンのチョコレート文化を語る上で欠かせないのが、「タブレア(tablea)」です。

タブレアとは

タブレアは、焙煎したカカオ豆を細かくすりつぶし、円盤状や球状に固めた、フィリピン伝統のチョコレートです。砂糖を加えていない100%カカオが基本で、いわば「飲むための純粋なカカオの塊」。これを湯や牛乳に溶かして温かい飲み物にするのが、昔ながらの楽しみ方です。

家庭で愛される「シクワテ」

タブレアを溶かして作る温かいチョコレート飲料は「シクワテ(sikwate)」と呼ばれ、フィリピンの家庭で朝食やおやつに親しまれています。専用の木製の器具でかき混ぜて泡立てる様子は、どこか本格的。もち米のお粥「チャンポラード」にタブレアを加えた甘い一品も、定番の味です。カカオを飲み物として味わう文化は、ホットチョコレートの作り方の原点ともいえる楽しみ方です。

Traditional Filipino tablea chocolate discs and a wooden stirrer, a steaming cup of sikwate hot choc

スペイン植民地時代に根づいたカカオ文化

フィリピンにこれほどカカオ文化が根づいているのには、歴史的な理由があります。

かつてスペインの植民地であったフィリピンには、スペインを通じて中南米のカカオと「飲むチョコレート」の文化が伝わりました。スペイン統治時代、太平洋を渡る交易路を通じてカカオの苗や飲用の習慣がもたらされ、やがてフィリピンの気候に合わせて栽培が広がっていったのです。

もともとカカオ飲料はメキシコのチョコレートに見られるように中南米で生まれ、スペインのチョコレートを経てヨーロッパへ、そして植民地であったフィリピンへと伝わりました。タブレアの文化は、そうした「カカオが世界をめぐった歴史」の生きた証といえるでしょう。

カカオ産地としてのフィリピン|ダバオ

フィリピンは、カカオの生産国としても存在感を高めています。

その中心が、南部ミンダナオ島の「ダバオ」地域です。ダバオは温暖な気候と豊かな土壌に恵まれ、フィリピン国内のカカオ生産の約8割を占めるといわれる一大産地。近年は品質の高いカカオを育てる取り組みが進み、フィリピン産カカオの評価は年々高まっています。

小規模農家が丁寧に育てるカカオは、フルーティーで個性豊かな風味を持つものも多く、世界のクラフトチョコメーカーからも注目される存在になっています。

Cacao farm in Davao Philippines with ripe colorful pods, a farmer harvesting, lush tropical mountain

世界が注目するフィリピンのBean to Bar

近年、フィリピンのチョコレートシーンで最も熱いのが、Bean to Barのムーブメントです。

その先駆者が、ダバオを拠点とする「マラゴス(Malagos)」。2003年に本格的なチョコレート事業を始め、自社農園で育てたカカオから一貫してチョコレートを作るBean to Barブランドとして、世界的なコンクールでも高く評価されています。2016年には、フィリピン初のチョコレート博物館「マラゴス・チョコレート・ミュージアム」も開設しました。

ほかにも「Auro(アウロ)」など、国際的な賞を受賞するブランドが登場し、フィリピン産カカオの実力を世界に示しています。伝統的なタブレア文化を土台に、現代的なBean to Barチョコレートへと発展を遂げている点が、フィリピンチョコの面白さです。

フィリピン旅行でチョコレートを楽しむには

フィリピンを訪れるなら、現地ならではのチョコレート体験もおすすめです。

まず味わってほしいのが、本場のシクワテ(タブレアの温かい飲み物)です。カフェやレストランで提供されることがあり、フィリピンの伝統的な朝食メニュー「チャンポラード」とともに楽しめます。日本で飲むホットチョコレートとは違う、素朴で濃厚なカカオの味わいは、旅の思い出になるはずです。

お土産としては、タブレアが定番です。日持ちしやすく、カカオ100%の塊なので持ち運びもしやすく、自宅で本場の味を再現できます。マラゴスなどのBean to Barブランドの板チョコは、少し特別なお土産として、チョコ好きの相手に喜ばれます。ダバオ地域を訪れる機会があれば、チョコレート博物館やカカオ農園の見学ができる施設もあり、カカオの世界を体感できます。

フィリピンカカオの未来

フィリピンのカカオ産業は、今まさに成長のただ中にあります。国内のカカオ生産を増やそうとする動きが進み、政府や生産者が一体となって品質向上に取り組んでいます。

伝統的なタブレア文化という揺るぎない土台があり、そこに世界水準のBean to Barという新しい潮流が加わった今、フィリピンは「カカオの島」としての存在感をますます高めています。フルーティーで個性豊かなフィリピン産カカオは、これからのクラフトチョコレートシーンで、さらに注目される産地になっていくことでしょう。伝統と革新が同居するその歩みは、カカオ生産国のこれからを考えるうえでも、大きなヒントを与えてくれます。

よくある質問(FAQ)

Q. タブレアとは何ですか?

タブレアは、焙煎したカカオ豆をすりつぶして円盤状などに固めた、フィリピン伝統の無糖チョコレートです。砂糖を加えない100%カカオが基本で、湯や牛乳に溶かして温かい飲み物「シクワテ」として楽しむのが伝統的な食べ方です。

Q. なぜフィリピンにカカオ文化が根づいているのですか?

かつてスペインの植民地だったフィリピンには、スペインを通じて中南米のカカオと「飲むチョコレート」の文化が伝わりました。その伝統が、タブレアやシクワテとして今も家庭に受け継がれています。

Q. フィリピンのカカオ産地はどこですか?

南部ミンダナオ島のダバオ地域が中心で、フィリピン国内のカカオ生産の約8割を占めるといわれます。温暖な気候と豊かな土壌に恵まれ、近年は高品質なカカオづくりが進んでいます。

Q. フィリピンに有名なチョコレートブランドはありますか?

ダバオ発の「マラゴス(Malagos)」が代表格です。自社農園のカカオから一貫製造するBean to Barブランドで、世界的なコンクールでも高評価。フィリピン初のチョコレート博物館も運営しています。「Auro」なども国際的に注目されています。

Q. フィリピンのチョコレートはお土産に向いていますか?

はい。タブレアは日持ちしやすく、フィリピンならではの伝統を伝えるお土産として人気です。マラゴスなどのBean to Barチョコは、産地の個性を味わえる本格派の贈り物として喜ばれます。

まとめ

フィリピンは、伝統的な飲むチョコ「タブレア」の文化と、世界が注目する最先端のBean to Barが共存する、奥深いチョコレートの国です。

スペイン植民地時代に伝わったカカオ文化は、シクワテやチャンポラードとして今も家庭に息づいています。そしてダバオを中心とした高品質なカカオを土台に、マラゴスやAuroといったブランドが、フィリピン産チョコの実力を世界に示しています。

伝統と革新が同居するフィリピンのチョコレート。南国のイメージの裏にある、豊かなカカオの物語を、タブレアの一杯やクラフトチョコの一枚から感じ取ってみてください。