Bean to Barチョコレートの専門店で「クリオロ種」「トリニタリオ種」といった表記を見かけたことはありませんか?実はカカオ豆には品種があり、ワインのブドウ品種のように味や香りが大きく異なります。
カカオ豆は主に3つの品種に分類され、その中には世界生産量のわずか数%しかない「幻のカカオ」と呼ばれる希少種も。この記事では、三大品種それぞれの特徴と味の違い、品種でチョコレートを選ぶ楽しみ方を詳しく解説します。
カカオ豆の三大品種とは?
クリオロ・フォラステロ・トリニタリオの3種類
世界で栽培されているカカオ豆は、大きく分けて3つの品種に分類されます。
| 品種名 | 生産量シェア | 主な特徴 |
|---|---|---|
| クリオロ種 | 3〜5% | 希少、香り高い |
| フォラステロ種 | 80〜90% | 主流、育てやすい |
| トリニタリオ種 | 15〜20% | 交配種、バランス良い |
それぞれの品種名はスペイン語に由来しています。
- クリオロ(Criollo):「自国のもの」「土着の」
- フォラステロ(Forastero):「外国のもの」「よそ者」
- トリニタリオ(Trinitario):カリブ海のトリニダード島に由来

ワインのブドウ品種のように理解しよう
ワインを選ぶとき、カベルネ・ソーヴィニヨンやピノ・ノワールなどのブドウ品種を参考にする方も多いでしょう。同じように、カカオ豆も品種によって味の「ポテンシャル」が異なります。
- クリオロ種 = ピノ・ノワール(繊細で香り高い)
- フォラステロ種 = カベルネ・ソーヴィニヨン(力強くしっかり)
- トリニタリオ種 = メルロー(バランスが良い)
このように品種を理解すると、チョコレート選びがぐっと楽しくなります。
クリオロ種|幻のカカオと呼ばれる希少品種
味の特徴|花のような華やかな香り
クリオロ種の最大の魅力は、花のような華やかで豊かな香りです。
- 苦みが少なく、甘味が強い
- マイルドで優しい風味
- 渋みの元となるポリフェノールが少ない
- 独特のナッティな香りを持つものも
その上品な風味から、かつてはアステカ帝国の皇帝モンテスマや、中世ヨーロッパの貴族たちに愛されていました。
外見的には、豆の形が細長くふっくらしており、焙煎前の生豆は白や黄紫色をしています。

なぜ希少なのか?栽培の難しさ
クリオロ種が世界生産量のわずか3〜5%(一説には0.5%とも)しか占めない理由は、その栽培の難しさにあります。
1. 病害虫に非常に弱い
クリオロ種は病気や害虫への抵抗力が極めて低く、栽培中に枯れてしまうリスクが高いのです。カカオ農家にとって、収穫できないリスクを抱えながら育てるのは大きな負担となります。
2. 他家受粉で純粋性が失われやすい
カカオは主に他家受粉(別の株の花粉で受粉)する植物です。そのため、近くにフォラステロ種があると交配が進み、世代を重ねるごとに「純粋なクリオロ種」ではなくなっていきます。
3. 生産地が限定的
現在、クリオロ種が栽培されているのは、ベネズエラ、メキシコなど中米の一部地域と、アジアのごく一部のみ。その希少性から「幻のカカオ」と呼ばれ、絶滅の危機にさらされている品種でもあります。
ホワイトカカオ|幻の中の幻
クリオロ種の中でも特に希少なのが「ホワイトカカオ」です。通常のカカオ豆よりも白い豆を持つ変異種で、その希少性は「幻の中の幻」と言えるほど。エクアドルなど一部の地域でしか見られません。
フォラステロ種|世界の主流を担う品種
味の特徴|力強い苦味と渋み
フォラステロ種は、カカオ豆らしい苦味・酸味・渋味がバランス良くそろった品種です。
- はっきりとした刺激的な香り
- 渋みと苦みが強く、コクのある味わい
- クリオロ種ほど香りは豊かではない
その力強い味わいから、ブレンドの際には「ベースビーン(味の土台)」として使われることが多く、世界中のチョコレートの基盤を支えています。
外見的には、豆はやや小粒で丸く、濃い褐色をしています。
栽培のしやすさが人気の理由
フォラステロ種が世界生産量の80〜90%を占める理由は、その栽培のしやすさにあります。
- 病気や害虫への抵抗力が強い
- 生長が早い
- 収量が多い
クリオロ種に比べると風味では劣るものの、安定して大量に生産できることから、大量生産のチョコレートに広く使用されています。
主な産地
フォラステロ種は世界中の広い地域で栽培されています。
- 西アフリカ:ガーナ、コートジボワール、ナイジェリア
- 南米:ブラジル
- アジア:ベトナム、インドネシア
日本で「ガーナチョコレート」として親しまれている味は、まさにフォラステロ種の風味が基本となっています。
トリニタリオ種|二つの良いとこ取り
誕生の経緯|トリニダード島で生まれた交配種
トリニタリオ種は、カリブ海に浮かぶトリニダード島で誕生した品種です。
18世紀頃、島で栽培されていたクリオロ種とフォラステロ種が自然交配し、両品種の「いいとこ取り」をしたハイブリッド種として生まれました。
- クリオロ種の香りの良さを継承
- フォラステロ種の病害虫への強さを継承
味の特徴|多彩な香りが魅力
トリニタリオ種の最大の特徴は、その多彩な香りです。
- フルーツのような香り
- ハーブを思わせる香り
- ナッツのような香ばしさ
力強いものから繊細なものまで幅広い個性を持ち、ブレンドの際には「フレーバービーン(風味付け役)」として使われることも。もちろん、単体でも十分に楽しめる品種です。
100種類以上のバリエーション
驚くべきことに、トリニタリオ種だけでも100種類以上のバリエーションが存在すると言われています。産地や系統によって風味が異なるため、同じトリニタリオ種でも全く違う味わいを楽しめます。
主な産地:
- ベネズエラ
- トリニダード・トバゴ
- 中南米各地
- スリランカ
- インドネシア
第4の品種?アリバ種(ナシオナル種)
エクアドルだけの固有種
三大品種に加えて、近年注目を集めているのが「アリバ種(ナシオナル種)」です。
- フォラステロ種の派生種
- エクアドルのみで生産される固有種
- 「アリバ(Arriba)」= 現地語で「川の上流」
- 「ナシオナル」= エクアドル固有種を意味する
ジャスミンのような花の香り
アリバ種の最大の特徴は、その華やかなフローラルな香りです。
- ジャスミンのような甘い花の香り
- 熟したバナナ、シナモン、ナッツの風味
- 酸味や苦味は控えめでバランスが良い
- 香りが強く、長く続く
その香り高さから、フォラステロ種でありながら唯一「ファインカカオ」として認定されている最高級カカオです。世界総生産量の約5%弱と希少性も高く、チョコレート愛好家から高い評価を受けています。
【比較表】三大品種の違いを一目で理解
味・香り・栽培特性の比較表
| 比較項目 | クリオロ種 | フォラステロ種 | トリニタリオ種 |
|---|---|---|---|
| 生産量シェア | 3〜5% | 80〜90% | 15〜20% |
| 香り | 華やか、花の香り | 控えめ | 多彩(フルーツ、ナッツ等) |
| 味 | マイルド、甘め | 苦み・渋み・酸味が強い | バランス良い |
| 栽培難易度 | 難しい | 容易 | 中程度 |
| 病害虫耐性 | 弱い | 強い | 中程度 |
| 主な産地 | ベネズエラ、メキシコ | 西アフリカ、ブラジル | トリニダード、中南米 |
| 用途 | 高級チョコレート | 大量生産チョコレート | ブレンド・単体両方 |
| ブレンドでの役割 | プレミアム素材 | ベースビーン | フレーバービーン |

品種の位置づけ
それぞれの品種を簡単にまとめると:
- クリオロ種 = 希少で高品質。「幻のカカオ」
- フォラステロ種 = 安定して大量生産。世界のチョコの土台
- トリニタリオ種 = 両方の良さを併せ持つバランス型
品種だけでチョコレートの味は決まらない?
発酵の重要性
実は、カカオ豆の味は品種だけでは決まりません。特に重要なのが「発酵」の工程です。
収穫されたカカオ豆は、バナナの葉などで包んで数日間発酵させます。この発酵がうまくいくかどうかで、チョコレートの風味が大きく変わります。
- 良い品種でも発酵に失敗すると→ 風味が損なわれる
- 普通の品種でも発酵が素晴らしければ→ 品種を超えた美味しさに
つまり、カカオ農家の発酵技術がチョコレートの味を大きく左右するのです。
焙煎・産地・加工方法の影響
品種以外にも、チョコレートの味に影響を与える要素は多くあります。
1. 焙煎
焙煎の温度や時間によって、同じ豆でも全く異なる風味に仕上がります。浅煎りならフルーティーに、深煎りなら香ばしくコクのある味わいに。
2. 産地の環境
土壌、気候、標高などの環境要因も味に影響します。同じ品種でも、産地が違えば味も異なります。
3. 加工方法
コンチング(練り上げ)やリファイニング(微粒化)の時間や方法によっても、口溶けや風味が変化します。
最新研究|カカオは10種類説も
近年の遺伝学研究では、「カカオは実は10種類に細分化できるのでは」という説も出てきています。従来の三大品種という分類は便宜的なもので、実際にはもっと複雑な系統があることが分かってきました。
今後の研究が進めば、チョコレートの品種表記もより細かくなっていくかもしれません。
品種で選ぶチョコレートの楽しみ方
品種名が明記されたチョコレートの探し方
品種を意識してチョコレートを選ぶなら、以下のような場所で探してみましょう。
Bean to Bar専門店
カカオ豆から一貫して製造するBean to Barショップでは、品種や産地を明記した商品が多く並んでいます。
シングルオリジンチョコレート
単一産地のカカオを使った「シングルオリジン」製品は、品種の特徴がダイレクトに味わえます。
パッケージの表記をチェック
高級チョコレートやクラフトチョコレートでは、パッケージに「Criollo」「Trinitario」などの品種名が記載されていることがあります。
初心者におすすめの品種
チョコレートの品種を楽しみ始めたい方には、以下の順番がおすすめです。
1. まずはトリニタリオ種から
バランスが良く、品種の特徴が分かりやすいトリニタリオ種から始めましょう。多彩な香りを楽しめます。
2. 慣れたらクリオロ種にチャレンジ
少し高価ですが、クリオロ種の華やかな香りは格別。希少性も相まって、特別な体験になります。
3. 産地違いの食べ比べ
同じ品種でも産地が違えば味も異なります。ベネズエラ産とマダガスカル産を比べてみるなど、産地の違いを楽しむのもおすすめです。
まとめ|カカオ品種を知るとチョコがもっと楽しい
カカオ豆の三大品種について、ポイントをおさらいしましょう。
三大品種の特徴:
- クリオロ種:希少(3-5%)、華やかな香り、病害虫に弱い「幻のカカオ」
- フォラステロ種:主流(80-90%)、苦み・渋みが強い、育てやすい
- トリニタリオ種:中間(15-20%)、多彩な香り、両品種の良いとこ取り
第4の品種:
- アリバ種(ナシオナル種):エクアドル固有、ジャスミンのような香り、唯一のファインカカオ認定
品種以外の重要な要素:
- 発酵の技術
- 焙煎の方法
- 産地の環境
品種を知ることで、チョコレート選びの幅が大きく広がります。Bean to Barショップで品種名をチェックしながら、自分好みのカカオを見つけてみてはいかがでしょうか。

参考情報:
この記事を書いた人
佐藤 真理子(チョコレートライター)
フリーランスのフードライターとして10年以上活動。Bean to Barチョコレートとの出会いをきっかけに、カカオの世界にのめり込む。国内外のチョコレート専門店への取材経験多数。「難しいことを分かりやすく」をモットーに、チョコレートの魅力を伝える記事を執筆している。
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