「チョコレートなのに、まるで花の香りがする」
そんな不思議な体験をしたことはありませんか?
サロン・デュ・ショコラなどのチョコレートイベントで、エクアドル産のチョコレートを口にした人の多くが驚くのが、その華やかでフローラルな香りです。ガーナ産のどっしりしたコク、ベルギーチョコの濃厚さとは全く異なる、軽やかで上品な香りの世界。
その秘密は、エクアドルでのみ栽培される「アリバ種(ナシオナル種)」という希少なカカオ品種にあります。
この記事では、エクアドル産カカオの特徴から、なぜフローラルな香りがするのか、そして世界的に評価されている「パカリ」などのブランドまで、詳しく解説します。
エクアドルは「カカオの原産地」|基本情報
まずは、エクアドルという国について基本情報を押さえておきましょう。

エクアドルの基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 位置 | 南米大陸の北西部(太平洋に面する) |
| 首都 | キト |
| 公用語 | スペイン語 |
| 人口 | 約1,800万人 |
| 特徴 | 赤道直下(国名の由来)、アンデス山脈、ガラパゴス諸島 |
「エクアドル(Ecuador)」という国名は、スペイン語で「赤道」を意味します。まさに赤道が国土を横切る、熱帯の国です。
カカオの原産地
エクアドルは「カカオの原産地」とも言われています。
南米アマゾン地域はカカオの起源とされ、5,000年以上前からカカオが栽培されていた痕跡が見つかっています。エクアドルは、カカオの歴史そのものと言える国なのです。
世界第4位のカカオ生産国
エクアドルは現在、世界第4位のカカオ生産国です。
| 順位 | 国名 | 生産量 |
|---|---|---|
| 1位 | コートジボワール | 約237万トン |
| 2位 | ガーナ | 約65万トン |
| 3位 | インドネシア | 約64万トン |
| 4位 | エクアドル | 約36〜43万トン |
| 5位 | ブラジル | 約27万トン |
近年、エクアドルはカカオ生産量を急速に伸ばしており、世界3位に迫る勢いです。
ただし、エクアドルの強みは「量」よりも「質」。後述する「フィノデアロマ」と呼ばれる高品質カカオの生産では、世界一の地位を誇っています。
アリバ種(ナシオナル種)とは?エクアドル固有の希少カカオ
エクアドル産チョコレートの特徴を語る上で、避けて通れないのが「アリバ種」です。

エクアドル固有の品種
アリバ種(別名:ナシオナル種)は、エクアドルでのみ栽培される固有品種です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名称 | アリバ・ナシオナル種(Arriba Nacional) |
| 分類 | フォラステロ種の派生種(遺伝的には独自の系統) |
| 生産量 | 世界のカカオ生産量の約2% |
| 栽培地域 | エクアドル国内のみ(他国での栽培は困難) |
世界のカカオ生産量のわずか2%程度しか存在しない、非常に希少な品種です。
なぜ「アリバ」と呼ばれる?
「アリバ(Arriba)」はスペイン語で「上流」を意味します。
その由来には面白いエピソードがあります。
かつてエクアドルのグアヤキル港からカカオが輸出される際、港の商人が農民に「このカカオはどこから来たのか?」と尋ねました。農民は「Arriba(上流から)」と答えました。
グアヤキル川の上流地域で栽培されていたことから、このカカオは「アリバ」と呼ばれるようになったのです。
カカオの原生種に近い遺伝子
アリバ種は、希少品種であるクリオロ種がエクアドル特有の環境に適応して変異した品種とされています。
カカオの原生種に近い遺伝子を持っており、他の品種にはない独特の香りを生み出します。
フローラルな香りの秘密|なぜエクアドル産は華やかなのか
エクアドル産チョコレートの最大の特徴は、その「フローラルな香り」です。
アリバ種の香りの特徴
アリバ種から作られたチョコレートには、以下のような香りが感じられます。

| 香りの種類 | 具体的な表現 |
|---|---|
| フローラル | ジャスミン、ベゴニアのような白い花の香り |
| フルーティー | 熟したバナナ、トロピカルフルーツ |
| スパイシー | シナモン、ナツメグのようなスパイス感 |
| ナッティー | 後味にヘーゼルナッツのような香ばしさ |
特に印象的なのは、ジャスミンのようなフローラルな香りです。チョコレートを口に含んだ瞬間、まるで花畑にいるような華やかさが広がります。
なぜフローラルな香りがする?3つの理由
エクアドル産カカオがフローラルな香りを持つ理由は、大きく3つあります。
理由①: アリバ種の遺伝子
アリバ種は、カカオの原生種に近い遺伝子を持っています。この品種特有の香り成分(リナロール、ゲラニオールなど)が、フローラルな香りを生み出します。
これらの成分は、ジャスミンやバラなどの花にも含まれるものです。
理由②: エクアドル特有の気候
- 赤道直下の高温多湿: カカオの成長に最適な環境
- アンデス山脈からの風: 適度な気温差が香り成分を凝縮
- 肥沃な火山性土壌: ミネラル豊富な土壌が風味を豊かに
理由③: 伝統的な発酵技術
エクアドルでは、木箱を使った伝統的な発酵が行われています。雨季や乾季など、エクアドル特有の季節に合わせて発酵条件を調整することで、繊細な香りが引き出されます。
他産地との香りの比較
同じカカオでも、産地によって香りは大きく異なります。
| 産地 | 香りの特徴 |
|---|---|
| エクアドル | フローラル(ジャスミン)、華やかで軽やか |
| ガーナ | 香ばしい、ココアパウダー的、どっしり |
| ベネズエラ | ナッツ、複雑で深い |
| マダガスカル | 柑橘系、ベリーのような酸味 |
| ベトナム | トロピカルフルーツ、マンゴー |
「香りで選ぶチョコレート」なら、エクアドル産が一番のおすすめです。
「フィノデアロマ」とは?世界最高品質のアロマカカオ
エクアドル産カカオを語る上で欠かせないのが、「フィノデアロマ」という言葉です。

フィノデアロマとは
フィノデアロマ(Fino de Aroma)は、国際ココア機関(ICCO)が認定する「高品質アロマカカオ」のことです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 意味 | スペイン語で「繊細な香り」 |
| 認定機関 | 国際ココア機関(ICCO) |
| 世界シェア | 全カカオ生産量の約5〜8% |
| エクアドルの割合 | 世界のフィノデアロマの60%以上 |
エクアドルは「フィノデアロマの宝庫」
驚くべきことに、世界のフィノデアロマの60%以上がエクアドル産です。
これは、アリバ種という品種の優秀さと、エクアドルの気候・土壌・発酵技術が組み合わさった結果です。
「最高品質のアロマカカオを求めるなら、エクアドル産を選べ」と言われる理由がここにあります。
パカリ(PACARI)|エクアドルを代表するTree to Barブランド
エクアドルのチョコレートと言えば、まず名前が挙がるのが「パカリ(PACARI)」です。

パカリの基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 創業 | 2002年 |
| 創業者 | サンティアゴ・ペラルタ、カルラ・バルボト(夫婦) |
| 本拠地 | エクアドル・キト |
| 製法 | Tree to Bar(木からチョコレートまで一貫生産) |
| 公式サイト | pacarichocolate.jp(日本語) |
ブランド名の由来
「パカリ(Pacari)」は、エクアドルの先住民ケチュア族の言葉で「自然」を意味します。
地球からの最高の製品、天然100%であること、チョコレートの起源を大切にするという想いが込められています。
創業ストーリー
パカリは、夫婦の挑戦から始まりました。
2002年、サンティアゴ・ペラルタとカルラ・バルボトは、エクアドルのカカオ産業を変えたいという想いで会社を設立。当時、2人は農業の経験も知識もありませんでした。
「農家と一緒に学び、カカオ豆をうまく粉砕したり発酵させたりする装置を設計しました」とペラルタ氏は語っています。
パカリは、エクアドルで初めてカカオの木の栽培からチョコレート生産まで一貫して手がけるようになりました。
アリバ種を守るために設立
パカリ設立の大きな目的の一つが、アリバ・ナシオナル種カカオの保護です。
かつてエクアドルのカカオの大部分を占めていたアリバ種ですが、病害への弱さや収穫量の少なさから、現在は全体の5〜10%程度に減少しています。
パカリは、アリバ種の原木保存やカカオ遺伝子を保護する活動に取り組んでいます。
輝かしい受賞歴
パカリは、世界で最も権威あるチョコレートコンテストで多数の賞を受賞しています。
- インターナショナルチョコレートアワーズ: 2012年から3年連続金賞
- 累計受賞数: 200以上の国際的な賞
農家との直接取引
パカリは、約3,500軒(約25,000人)の農家とカカオ豆を直接取引しています。
- 有機栽培・フェアトレードを推進
- 農家に適正な価格を支払う
- アグロフォレストリー農法(森林と共生する栽培)を支援
日本でエクアドルチョコを買う方法
エクアドル産チョコレートは、日本でも購入することができます。
購入方法一覧
| 方法 | 詳細 |
|---|---|
| パカリ公式オンラインショップ | pacarichocolate.jp |
| サロン・デュ・ショコラ | 毎年1〜2月に開催される日本最大のチョコレートイベント |
| 百貨店バレンタイン催事 | 伊勢丹、高島屋、阪急などのバレンタインフェア |
| 輸入食品店 | カルディ(一部店舗) |
| Bean to Barショップ | ダンデライオンチョコレート、Minimalなど |
おすすめの購入タイミング
サロン・デュ・ショコラ(毎年1〜2月)は、普段手に入らないエクアドルブランドが一堂に会する絶好の機会です。
また、百貨店のバレンタイン催事でも、パカリをはじめとするエクアドルブランドが出展することがあります。
よくある質問(FAQ)
Q. アリバ種とナシオナル種は同じもの?
はい、同じ品種です。「アリバ」は産地に由来する名称、「ナシオナル」は「国産の」という意味のスペイン語で、どちらもエクアドル固有のカカオ品種を指します。
Q. エクアドル産チョコレートの味の特徴は?
「フローラルな香り」が最大の特徴です。ジャスミンやベゴニアのような白い花の香りがあり、酸味や苦味は控えめでまろやかな味わいです。
Q. フィノデアロマとは何ですか?
国際ココア機関(ICCO)が認定する「高品質アロマカカオ」のことです。世界のカカオ生産量の約5〜8%しか認定されず、そのうち60%以上がエクアドル産です。
Q. パカリはどこで買えますか?
公式オンラインショップ(pacarichocolate.jp)のほか、サロン・デュ・ショコラや百貨店のバレンタイン催事、一部の輸入食品店で購入できます。
まとめ
この記事では、エクアドル産カカオの特徴と、その華やかな香りの秘密について解説しました。
この記事のポイント:
- エクアドル産カカオは「アリバ種(ナシオナル種)」という固有品種 – 世界のカカオ生産量の約2%という希少性
- フローラルな香りが最大の特徴 – ジャスミンのような華やかさは、品種・気候・発酵技術の賜物
- 世界のフィノデアロマの60%以上がエクアドル産 – 最高品質のアロマカカオの宝庫
- パカリは世界的に評価されるTree to Barブランド – 200以上の国際的な賞を受賞
エクアドル産チョコレートは、まさに「香りで楽しむチョコレート」です。
ガーナ産のどっしりしたコクとは異なる、軽やかで華やかな体験。ぜひ一度、アリバ種の魅力を体験してみてください。
著者: 佐藤 真理子(チョコレートライター)
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