ロッテの「ガーナチョコレート」を食べたことがない日本人は、おそらくほとんどいないのではないでしょうか。
あの赤いパッケージのチョコレートは、1964年の発売以来、60年以上にわたって日本人に愛され続けています。でも、「なぜガーナという名前なの?」「本当にガーナ共和国と関係があるの?」と聞かれると、答えられる人は意外と少ないかもしれません。
実は、日本が輸入するカカオ豆の約8割がガーナ産。私たちが日常的に食べているチョコレートの多くは、ガーナのカカオから作られているのです。
この記事では、ガーナ産カカオの味の特徴から、なぜ日本で多く使われているのか、そしてロッテ「ガーナ」の誕生秘話まで、分かりやすく解説します。
ガーナ共和国ってどんな国?カカオ大国の基本情報
まずは、ガーナ共和国について基本情報を押さえておきましょう。
ガーナの基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 位置 | 西アフリカ(ギニア湾に面する) |
| 首都 | アクラ |
| 公用語 | 英語 |
| 人口 | 約3,300万人 |
| 独立 | 1957年(イギリスから独立、アフリカで最初に独立した植民地) |
ガーナは「カカオベルト」と呼ばれる、カカオ栽培に適した赤道付近の地域に位置しています。高温多湿な熱帯気候がカカオの栽培に適しており、国土の中南部がカカオの主要産地です。
世界第2位のカカオ生産国
ガーナは、コートジボワールに次ぐ世界第2位のカカオ生産国です。

世界のカカオ生産量ランキング(2023年)
| 順位 | 国名 | 生産量 |
|---|---|---|
| 1位 | コートジボワール | 約237万トン |
| 2位 | ガーナ | 約65万トン |
| 3位 | インドネシア | 約66万トン |
| 4位 | エクアドル | 約36万トン |
| 5位 | カメルーン | 約29万トン |
世界のカカオ生産の約7割を西アフリカ地域が占めています。 コートジボワールとガーナだけで、世界の約6割を生産しているのです。
ガーナのカカオ栽培の歴史
- 1879年: テテ・クワシによりカカオ豆がガーナに導入
- 1911年: ガーナが世界最大のカカオ生産国に
- 1957年: イギリスから独立、カカオは主要な輸出品に
- 現在: コートジボワールに次ぐ世界第2位
ガーナにカカオが導入されたのは、実は19世紀後半のこと。南米原産のカカオが、ヨーロッパを経由してアフリカにもたらされたのです。
ガーナ産カカオの味の特徴|なぜ「日本人好み」なのか
では、ガーナ産カカオにはどのような味の特徴があるのでしょうか?
フォラステロ種とは?
ガーナで栽培されているカカオは、主に「フォラステロ種」という品種です。
カカオには大きく分けて3つの品種があります。
| 品種 | 特徴 | 生産量シェア | 主な産地 |
|---|---|---|---|
| フォラステロ種 | 苦味・コクが強い、チョコレートらしい味 | 80〜90% | ガーナ、コートジボワール |
| クリオロ種 | まろやかで複雑な香り、希少 | 約5% | ベネズエラ、メキシコ |
| トリニタリオ種 | 両者の交配種、バランス良 | 約10〜15% | トリニダード・トバゴ |
フォラステロ種は、病害虫に強く、収穫量が多いのが特徴。そのため世界中で広く栽培されています。
ガーナ産カカオの味わいの特徴
ガーナ産カカオの味は、一言で表すと「バランスの良さ」です。
| 特徴 | 説明 |
|---|---|
| バランスの良さ | 酸味・苦味・渋味のバランスが取れている |
| コクと香ばしさ | 豊かなコクがあり、余韻の残る香ばしさ |
| スタンダードな味 | 「ココアパウダー」のような日本人に馴染み深い味わい |
| ブレンドしやすい | 万能型で、他の産地との相性も良い |
ガーナ産カカオは「カカオのスタンダード」と呼ばれています。強い個性はないものの、誰からも好かれる味を持っているのです。
深煎りコーヒーや黒ビールのような、ほろ苦く香ばしい風味が好きな人には特におすすめです。
他の産地との味の比較
同じカカオでも、産地によって味わいは大きく異なります。
| 産地 | 品種 | 味わいの特徴 |
|---|---|---|
| ガーナ | フォラステロ種 | バランス良く香ばしい、コクがある |
| エクアドル | アリバ(ナシオナル)種 | ジャスミンのようなフローラルな香り |
| ベネズエラ | クリオロ種 | ナッツの香り、まろやかで複雑 |
| マダガスカル | トリニタリオ種 | 柑橘系の酸味、フルーティー |
| ベトナム | トリニタリオ種 | マンゴーのようなフルーティーな酸味 |
ガーナ産は「チョコレートらしいチョコレートの味」と言えるでしょう。日本人が幼少期から慣れ親しんだ、あの馴染みのある味わいです。
日本の輸入カカオの8割がガーナ産!その理由とは
日本が輸入するカカオ豆の約80%はガーナ産です。なぜこれほど多いのでしょうか?

日本のカカオ輸入先
| 輸入先 | 割合 |
|---|---|
| ガーナ | 約76〜80% |
| エクアドル | 約10% |
| その他(ベネズエラ、インドネシア等) | 約10〜14% |
世界最大の生産国はコートジボワールですが、日本はガーナからの輸入を重視しています。その理由は主に3つあります。
理由①: 政府による品質管理(COCOBOD)
ガーナには「COCOBOD(ガーナ・カカオ委員会)」という政府機関があり、カカオ産業を一元管理しています。
COCOBODの役割:
- カカオ豆の買い取り価格を政府が決定
- 厳格な品質基準による検査
- 輸出前の品質チェック
- 農家への技術指導
ガーナ産カカオは、大きさによってグレードが分けられます。 最上グレードで、水分量や発酵状態を確認し合格した良品だけが輸出されるのです。
この一元管理体制により、品質が安定しており、契約不履行のリスクも少ないというメリットがあります。
理由②: 日本による長年の技術支援
実は、日本はガーナのカカオ産業に長年技術支援を行ってきました。
- 栽培技術の指導
- 発酵・乾燥技術の改善
- 品質管理ノウハウの提供
ガーナ産カカオが国際的に高く評価され、プレミアム価格で取引されているのは、日本の技術支援の成果でもあると言われています。
理由③: 味のバランスが日本人好み
前述の通り、ガーナ産カカオは酸味・苦味・渋味のバランスが良いのが特徴。この味わいが、日本人の味覚に非常に合っているのです。

ロッテ、明治、森永といった日本の大手チョコレートメーカーは、ガーナ産カカオを主原料として使用しています。私たちが子供の頃から慣れ親しんだチョコレートの味は、まさにガーナ産カカオの味なのです。
ロッテ「ガーナ」の誕生秘話|1964年から60年の歴史
日本で「ガーナ」といえば、真っ先に思い浮かぶのはロッテのチョコレートではないでしょうか。その誕生秘話をご紹介します。

後発参入だったロッテのチャレンジ
ロッテは1948年に創業したチューインガムメーカー。チョコレート事業への参入を決めたのは1961年頃でした。
当時、日本のチョコレート市場には明治製菓(現・明治)や森永製菓といった老舗メーカーがすでに確固たる地位を築いていました。ロッテは約半世紀遅れての参入という、圧倒的な後発だったのです。
しかし、1960年にカカオ豆やココアバターの輸入が自由化され、新規参入にはまたとないチャンスの時期でもありました。
スイス人技術者との出会い
ロッテは「最高の原料」「最高の技術」「最高の機械」の3つを追求することからスタート。
ミルクチョコレートは配合で風味が大きく変わるため、原料の組み合わせは非常に繊細で重要な問題でした。そこでロッテは、チョコレートの本場・スイスから技術者マックス・ブラック氏を招聘。
マックス・ブラック氏の協力により、ロッテが満足する「なめらかでコク深いミルクチョコレート」が完成したのです。
1964年2月、「ガーナ」発売
1964年2月、浦和チョコレート工場が完成し、「ガーナミルクチョコレート」の製造・販売を開始しました。
革新的だった3つのポイント:
- 赤いパッケージ: 当時のチョコレートは茶色のパッケージが一般的。赤は非常に斬新だった
- スイス仕込みの製法: アメリカ式の甘いチョコレートが主流だった時代に、本格的なミルクチョコレートを提供
- 話題のプロモーション: 発売時に赤い手提げ袋を持った女子大生が都内を一週間歩き、大きな話題に
甘みの強いアメリカ式チョコレートが一般的だった当時の日本で、スイス仕込みのなめらかでコク深いミルクチョコレートは、驚きと喜びをもって迎えられました。
「ガーナ」という名前の由来
商品名「ガーナ」は、もちろんガーナ共和国に由来しています。
高品質なガーナ産カカオを使用することへのこだわりを、そのまま商品名に込めたのです。「ガーナ」という響きも、当時の日本人にとって新鮮で覚えやすいものでした。
2024年、発売60周年
2024年2月、ロッテ「ガーナ」は発売60周年を迎えました。
60周年を記念して、2024年9月には11年ぶりのリニューアルを実施。従来より厚さを0.5mm(約10%)厚くし、より食べ応えのある仕様になりました。
ガーナ産カカオを使った日本のチョコレート
ガーナ産カカオは、多くの日本のチョコレートに使われています。
ロッテ「ガーナ」シリーズ
| 商品名 | 特徴 |
|---|---|
| ガーナミルク | 定番の赤パッケージ、なめらかなミルクチョコレート |
| ガーナブラック | ビターな味わい、カカオの風味が強め |
| ガーナブラックエクセレント | より高カカオ、上質な苦味 |
| ガーナ生チョコレート | 口どけなめらかな生チョコタイプ |
| ガーナリップル | 波打つ形状で口どけの良さを追求 |
ガーナミルクは「日本で一番売れているチョコレート」と言われています。
その他のチョコレート
ガーナ産カカオを使用しているのは、ロッテだけではありません。
- 明治「ミルクチョコレート」: 1926年発売のロングセラー
- 明治「ザ・チョコレート」: 産地別シリーズでガーナ産も展開
- 森永「ダース」: ガーナ産カカオを使用
日本の大手メーカーの多くが、ガーナ産カカオを主原料として使用しています。
ガーナ産カカオの課題|児童労働とフェアトレード
ガーナ産カカオには、知っておくべき課題もあります。

児童労働問題
カカオ生産国では、農作業に子どもが従事する「児童労働」が問題になっています。
ガーナでは約77万人の子どもがカカオ農業に従事しているとされています(2020年調査)。危険な作業や長時間労働など、子どもの健康や教育に悪影響を及ぼすケースも少なくありません。
生産量の減少
近年、ガーナのカカオ生産量は減少傾向にあります。
主な原因:
- 気候変動による天候不順
- カカオの木の高齢化(植え替えが進んでいない)
- 病害のまん延
- 違法採掘による農地破壊
2024年の生産量は、ピーク時の約半分にまで落ち込んでいるとも言われています。
消費者としてできること
私たち消費者ができることとして、フェアトレード認証のチョコレートを選ぶ方法があります。
フェアトレードとは:
- 生産者に適正な価格を支払う
- 児童労働の禁止
- 環境に配慮した生産
- 地域社会への還元
フェアトレード認証マークがついたチョコレートは、スーパーやコンビニでも見かけるようになりました。購入を通じて、カカオ生産者の生活向上に貢献できます。
まとめ
この記事では、ガーナ産カカオの特徴とロッテ「ガーナ」の歴史について解説しました。
この記事のポイント:
- ガーナ産カカオは「バランスの良さ」が特徴 – 酸味・苦味・渋味のバランスが取れた、日本人に馴染み深い味
- 日本の輸入カカオの約8割がガーナ産 – COCOBODによる品質管理と、味のバランスが日本人好みという理由
- ロッテ「ガーナ」は1964年発売、2024年で60周年 – スイス人技術者の協力で誕生した、日本を代表するチョコレート
ガーナ産カカオは、まさに「日本人の味の原点」と言えるでしょう。
子供の頃から慣れ親しんだあのチョコレートの味は、西アフリカのガーナから届いたカカオ豆から生まれています。次にチョコレートを食べるとき、ぜひガーナのことを思い出してみてください。
著者: 佐藤 真理子(チョコレートライター)
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