「アメリカのお土産でもらったチョコレート、なんか酸っぱくない…?」
アメリカ帰りの友人からもらったHershey’s(ハーシー)を食べて、そう感じたことはありませんか?日本のチョコレートとは明らかに違う風味。自分の舌がおかしいのかと不安になった人もいるかもしれません。
安心してください。その違和感、正しいです。
アメリカのチョコレートと日本・ヨーロッパのチョコレートには、科学的・歴史的に明確な違いがあります。この記事では、その「なぜ?」を徹底解説。読み終わる頃には、飲み会で「アメリカチョコが酸っぱい理由、知ってる?」と語れるようになりますよ。
【結論】アメリカチョコが「違う」3つの理由
まずは結論から。アメリカのチョコレートが日本やヨーロッパと違う理由は、大きく3つあります。
| 違いの観点 | アメリカ | 日本・ヨーロッパ |
|---|---|---|
| 風味 | 酸味あり(酪酸由来) | なめらか・まろやか |
| カカオ基準 | ミルクチョコは10%〜でOK | 25%〜必要(EU) |
| 油脂 | 植物油脂も使用可 | カカオバター重視 |
一言でいえば、アメリカのチョコは「甘くて保存性重視」、日本・ヨーロッパは「カカオ感と口溶け重視」です。
これは「どちらが優れている」という話ではありません。文化と歴史が生んだ違いなのです。それぞれ詳しく見ていきましょう。
ハーシーが「酸っぱい」科学的な理由

犯人は「酪酸」(Butyric Acid)
アメリカのチョコレート、特にHershey’s(ハーシー)が酸っぱく感じる原因は、酪酸(らくさん)という成分です。
酪酸とは?
- バターやチーズに含まれる天然の脂肪酸
- パルメザンチーズの独特の香りの成分の一つ
- 実は人間の嘔吐物にも含まれる(だからヨーロッパ人には「ゲ○の味」と言われることも…)
日本人やヨーロッパ人がハーシーのチョコを食べて「酸っぱい」「チーズっぽい」と感じるのは、この酪酸の影響なのです。
なぜハーシーには酪酸が含まれるのか
ハーシーのチョコレートに酪酸が含まれる理由は、1930年代に始まった独自の製法にあります。
「ハーシー・プロセス」誕生の背景:
- アメリカは広大:ペンシルベニアの工場から牧場まで何千マイルもの距離
- 20世紀初頭は冷蔵技術が未発達:輸送中にミルクが腐ってしまう
- 解決策:ミルクを「安全に劣化させてから」使用する
この製法では、ミルクの脂肪を制御された状態で分解(リポリシス)させます。その過程で酪酸が生成され、独特の風味が生まれるのです。
この製法は「ハーシー・プロセス」と呼ばれ、今なお企業秘密です。
ハーシー社の公式見解
ハーシー社はこの問題について、以下のように説明しています。
「ハーシーはチョコレートに酪酸を添加しているという主張がありますが、これは事実ではありません。私たちはペンシルベニア州の近隣牧場から毎日届く新鮮な牛乳を使用しています。新鮮な牛乳には微量の酪酸が自然に含まれています」
つまり、「添加している」のではなく「製造過程で生成される」というのがハーシー側の主張です。
他のアメリカメーカーへの影響
興味深いのは、アメリカの消費者がこの「酸味」に慣れてしまったことです。
その結果、ハーシー・プロセスを使わないメーカーも、あえて酪酸を添加してアメリカ人好みの味に調整することがあります。アメリカ市場で売れるためには、この「酸っぱさ」が必要になってしまったのです。
カカオ含有量の日米欧比較
「アメリカのチョコは甘すぎる」という感想もよく聞きます。これにはカカオ含有量の基準の違いが関係しています。

アメリカ(FDA基準)
アメリカの食品医薬品局(FDA)が定めるチョコレートの基準は以下の通りです。
| 種類 | カカオマス | その他要件 |
|---|---|---|
| ミルクチョコレート | 10%以上 | 乳固形分12%以上 |
| スイートチョコレート | 15%以上 | 乳固形分12%以下 |
| セミスイート/ビタースイート | 35%以上 | – |
注目すべきは、ミルクチョコレートのカカオマスが10%で良いという点。つまり、残りの90%は砂糖や乳製品で構成されても「チョコレート」と名乗れるのです。
EU(欧州基準)
一方、EUのチョコレート指令(2000/36/EC)ではより厳格な基準が設けられています。
| 種類 | カカオ分 | 備考 |
|---|---|---|
| ミルクチョコレート | 25%以上 | カカオバター含む |
| チョコレート | 35%以上 | – |
EUでは、ミルクチョコレートでもカカオ分25%以上が必要。アメリカの2.5倍の基準です。
さらに、ベルギーやオランダなど「チョコレート先進国」では、カカオバター100%でなければチョコレートと認めないという純粋主義的な考え方もあります。
日本(公正競争規約)
日本のチョコレート基準は、アメリカとEUの中間的な位置づけです。
| 種類 | カカオ分 | 備考 |
|---|---|---|
| チョコレート | 35%以上 | または21%以上+カカオバター18%以上 |
| 準チョコレート | 15%以上 | – |
日本は比較的厳格な基準を持ちつつ、「準チョコレート」というカテゴリで柔軟性も確保しています。
比較まとめ
- アメリカ: 最も緩い基準(ミルクチョコ10%〜)→ 甘くて食べやすい
- EU: 最も厳格(ミルクチョコ25%〜)→ カカオ感が強い
- 日本: 中間(チョコレート35%)→ バランス型
この基準の違いが、各国のチョコレートの「味の方向性」を決定づけているのです。
アメリカチョコの歴史|戦争と大量生産
なぜアメリカのチョコレートは「保存性重視・大量生産型」になったのでしょうか?その答えは歴史にあります。

ハーシーの誕生(1894年〜)
アメリカチョコレートの歴史は、Milton Hershey(ミルトン・ハーシー)から始まります。
| 年 | 出来事 |
|---|---|
| 1894年 | ペンシルベニア州でキャラメル事業を開始 |
| 1900年 | ミルクチョコレートの製造開始 |
| 1907年 | 「Hershey’s Kisses」発売 |
| 1930年代 | 「ハーシー・プロセス」導入 |
| 現在 | 北米最大のチョコレートメーカー |
ハーシーは、当時高級品だったチョコレートを庶民の手に届く価格で提供することを目指しました。大量生産と保存性の向上は、その夢を実現するための手段だったのです。
第二次世界大戦と軍用チョコレート
アメリカチョコレート史を語る上で欠かせないのが、第二次世界大戦です。
アメリカ軍はハーシーに対し、軍用チョコレート「D-Ration」の開発を依頼しました。その条件は驚くべきものでした。
D-Rationの開発条件:
- 「49度(華氏120度)でも溶けない」
- 「4オンス(約113g)で600kcalのエネルギー」
- 「味は二の次、保存性と栄養価を優先」
結果、味は「茹でたジャガイモよりはマシ」程度のものが完成。しかし、この大量生産体制と保存技術が、戦後のアメリカチョコレート産業の基盤となりました。
戦争がアメリカチョコの方向性を決めたと言っても過言ではありません。
アメリカの定番チョコブランド4選
アメリカにはハーシー以外にも、世界的に有名なチョコレートブランドがあります。それぞれの特徴を見ていきましょう。

Hershey’s(ハーシー)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 創業 | 1894年 |
| 本社 | ペンシルベニア州ハーシー |
| 代表商品 | Hershey’s Kisses、Hershey Bar |
| 特徴 | 北米最大手、酪酸による独特の風味 |
アメリカチョコレートの代名詞。「酸っぱい」の元祖です。ペンシルベニア州には「ハーシー」という名前の街まであり、街灯がKissesの形をしています。
M&M’s(エムアンドエムズ)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 発売 | 1941年 |
| メーカー | Mars Inc.(マーズ社) |
| 由来 | 創業者 Mars & Murrie の頭文字 |
| 特徴 | カラフルな砂糖コーティング |
「口の中で溶けて、手に溶けない」というキャッチコピーで有名。実はこれ、アメリカ軍兵士の要望から生まれた商品です。戦場でチョコレートを食べたいけど、暑さで溶けて手がベタベタになるのが困る——という声に応えて開発されました。
宇宙食としても採用された実績があり、その保存性は折り紙付きです。
Snickers(スニッカーズ)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 発売 | 1930年 |
| メーカー | Mars Inc. |
| 構成 | ピーナッツ、キャラメル、ヌガー、ミルクチョコ |
| 称号 | 世界で最も売れているキャンディバー |
「おなかがすいたらスニッカーズ」でおなじみ。日本でも定番のチョコバーです。ピーナッツとキャラメルの組み合わせが特徴で、満足感の高いおやつとして世界中で愛されています。
Reese’s(リーシーズ)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| メーカー | The Hershey Company |
| 特徴 | ピーナッツバター×チョコレート |
| 形状 | 平べったいカップ型 |
オレンジ色のパッケージが目印。ピーナッツバターとチョコレートの組み合わせは、アメリカで絶大な人気を誇ります。
1982年の映画「E.T.」にReese’s Piecesが登場したことで、売上が300%も増加したという逸話も。日本では知名度が低いですが、アメリカでは国民的お菓子です。
日本人がアメリカチョコを食べた反応
実際に日本人がアメリカのチョコレートを食べると、どんな反応になるのでしょうか?

よくある感想
- 「酸っぱい」「すっぱみがある」
- 「チーズのような後味」
- 「甘すぎる」
- 「日本のチョコのほうが口溶けが良い」
- 「なんか舌がザラザラする」
特にハーシーは、酪酸の影響で「ゲ○の味がする」という厳しい感想も…。これは酪酸が嘔吐物にも含まれる成分だからです。
慣れると変わる?
興味深いのは、アメリカに長期滞在すると味覚が変わるという声です。
- 「最初は苦手だったけど、慣れたら懐かしくなる」
- 「日本に帰国後、ハーシーが恋しくなった」
- 「これがチョコの味だと思い込むようになる」
味覚は文化に依存します。アメリカ人がハーシーを「普通のチョコ」と感じるのと同様、日本人にとって明治やロッテが「普通のチョコ」なのです。
日本でも人気のアメリカチョコ
ただし、M&M’sやSnickersは日本でも人気があります。これらは酪酸が少ない(またはない)ため、日本人の味覚にも合いやすいのです。
まとめ|アメリカチョコの「違い」を楽しもう
アメリカのチョコレートが日本やヨーロッパと違う理由をおさらいしましょう。

アメリカチョコが「違う」理由:
| 観点 | 内容 |
|---|---|
| 酸味の正体 | 酪酸(ハーシー・プロセスで生成) |
| カカオ基準 | アメリカ10%、EU25%、日本35% |
| 歴史的背景 | 冷蔵技術の未発達、戦争による大量生産 |
| 代表ブランド | Hershey’s、M&M’s、Snickers、Reese’s |
大切なのは「まずい」ではなく「違う」という視点です。
アメリカのチョコレートには、広大な国土、戦争の歴史、大量生産文化という背景があります。日本やヨーロッパのチョコとは、そもそも目指している方向が違うのです。
次にアメリカ土産のチョコレートをもらったら、ぜひこの記事を思い出してください。「酸っぱい理由、知ってる?」と話せたら、あなたも立派なアメリカチョコ通です。
参考文献:
- HuffPost「Why Hershey’s Chocolate Tastes Like Vomit」
- The Takeout「Why Hershey’s Chocolate Tastes Like Puke」
- VANILLABEANS「チョコレートのカカオ成分の違いによる分類」
- M&M’s公式サイト「M&M’Sの歴史」
著者: 佐藤 真理子(チョコレートライター)
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