テンパリングとは?チョコレートの温度調整
テンパリング(Tempering)とは、チョコレートに含まれるカカオバター(ココアバター)の結晶を安定させるための温度調整作業です。「調温」とも呼ばれます。
チョコレートを溶かし、適切な温度で冷却・再加熱することで、カカオバターを最も安定した結晶形態(V型結晶)に整えます。

テンパリングで得られる4つの効果
- 美しいツヤ: 表面に光沢が生まれ、見た目が美しくなる
- 滑らかな口溶け: 口に入れた瞬間にスッと溶ける食感を実現
- パリッとした硬さ: 適度な硬さで気持ちよく割れる
- 型離れの良さ: 型から綺麗に外れる
市販のチョコレートのような美しい仕上がりを目指すなら、テンパリングは欠かせない工程なのです。
なぜテンパリングが必要?カカオバターの結晶の秘密
テンパリングが必要な理由は、カカオバターの特殊な性質にあります。
カカオバターには6種類の結晶型がある
カカオバターは「多形(ポリモルフィズム)」という性質を持ち、6種類もの結晶形態に固まることができます。それぞれ融点が異なります。
| 結晶型 | 融点 | 特徴 |
|---|---|---|
| Ⅰ型 | 17℃ | 不安定、柔らかい |
| Ⅱ型 | 23℃ | 不安定 |
| Ⅲ型 | 25℃ | 不安定 |
| Ⅳ型 | 28℃ | 不安定 |
| Ⅴ型 | 33℃ | 安定、ツヤ・口溶け良好 |
| Ⅵ型 | 36℃ | 過安定(時間経過で発生) |
なぜV型結晶が最適なのか
私たちが「美味しい」と感じるチョコレートは、V型結晶でできています。
- 融点が体温より少し低い(33℃): 口に入れると体温でスッと溶ける
- 室温(20〜30℃)では固体: 持ち運びしやすく、手で持っても溶けにくい
- 結晶粒径が細かい: なめらかな口溶けを実現
- 高密度: 型から外れやすい
- 光沢がある: 美しい見た目
人間の体温は約36℃。V型結晶の融点33℃は、口の中に入れた瞬間にとろけ出す絶妙な温度設計なのです。
テンパリングしないとどうなる?
チョコレートを溶かしてそのまま冷やすと、Ⅰ〜Ⅳ型の不安定な結晶が混在した状態で固まります。すると:
- 表面が白っぽくなる(ファットブルーム)
- ツヤがないくすんだ見た目
- 口溶けが悪いザラザラした食感
- 固まりにくい、または柔らかすぎる
- 型から外れにくい
手作りチョコが白くなってしまう原因は、まさにこれなのです。
テンパリングの基本原理|3段階の温度変化
テンパリングは、チョコレートの温度を3段階で調整することで、V型結晶だけを作り出す作業です。

第1段階: 溶解(50℃前後)
チョコレートを完全に溶かし、すべての結晶構造を崩します。この段階でⅠ〜Ⅵ型すべての結晶がリセットされます。
第2段階: 冷却(27〜28℃)
温度を下げることで、V型結晶の「核」を作ります。この温度帯では、V型を含む複数の結晶型が発生し始めます。
第3段階: 再加熱(31〜32℃)
再び温度を上げることで、不安定なⅠ〜Ⅳ型の結晶を溶かし、V型結晶だけを残します。V型結晶の融点は33℃なので、31〜32℃では溶けずに残ります。
この3段階の温度調整を経て、チョコレートはV型結晶だけで構成された状態になり、ツヤがあって口溶けの良い仕上がりになるのです。
チョコレートの種類別テンパリング温度
チョコレートの種類によって、含まれる油脂の成分が異なるため、テンパリングの温度も変わります。
| 種類 | 溶かす温度 | 冷却温度 | 最終温度 |
|---|---|---|---|
| ダーク(ビター) | 50〜55℃ | 27〜29℃ | 31〜32℃ |
| ミルク | 45〜50℃ | 26〜28℃ | 29〜30℃ |
| ホワイト | 40〜45℃ | 25〜27℃ | 28〜29℃ |
ミルク・ホワイトの温度が低い理由
ミルクチョコレートとホワイトチョコレートには乳脂(ミルクファット)が含まれています。乳脂はカカオバターより融点が低いため、全体的に温度設定を低くする必要があります。
テンパリングのやり方5選|初心者から上級者まで
テンパリングには様々な方法があります。難易度と特徴に合わせて、自分に合った方法を選びましょう。
1. 水冷法(初心者向け)
家庭で最も一般的な方法です。湯煎と冷水で温度を調整します。
必要な道具: ボウル、温度計、ゴムベラ、湯煎用の鍋
手順:
- チョコレートを細かく刻む
- 湯煎(50℃のお湯)で40〜45℃に溶かす
- ボウルの底を冷水につけ、混ぜながら27〜28℃まで冷却
- 再び湯煎で31〜32℃に調整
- テストで成功を確認したら完成
注意点: 水分がチョコレートに入らないよう、道具の水滴は完全に拭き取ること。
2. フレーク法(種チョコ法)
すでにテンパリングされている市販の板チョコを「種」として使う方法です。
メリット: 安定した結晶核を使うため、失敗が少ない
手順:
- チョコレートの2/3を湯煎で50℃に溶かす
- 残り1/3(種チョコ)を加えて混ぜる
- 温度が30〜32℃になるまで撹拌
- 種チョコが完全に溶けたら完成
3. 電子レンジ法(超簡単)
少量(100g程度)のテンパリングに最適な方法です。
メリット: 水分混入のリスクがない、初心者でも簡単
手順:
- チョコを細かく刻んで耐熱ボウルに入れる
- 電子レンジで10〜15秒ずつ加熱
- 粒が少し残る程度で取り出す
- ゆっくり混ぜて全体を溶かし、32℃以下に調整
ポイント: 加熱しすぎないこと。少しずつ様子を見ながら加熱する。
4. マイクリオ法(最も簡単)
マイクリオ(粉末状のカカオバター)を使う方法です。最も失敗が少なく、初心者におすすめです。
メリット: 安定した結晶を直接添加するため、温度管理が楽
手順:
- チョコを湯煎で45〜50℃に溶かす
- 34℃まで自然冷却
- チョコレート重量の1%のマイクリオを加える
- よく混ぜて32℃になれば完成
マイクリオは製菓材料店やオンラインショップで購入できます。
5. タブリール法(上級者向け)
大理石やステンレスの台にチョコレートを広げて冷却する、プロ向けの方法です。
メリット: 短時間で効率的に冷却できる
デメリット: 技術と専用の道具が必要
熟練したショコラティエが使う方法ですが、慣れれば最も効率的にテンパリングできます。

テンパリング成功の確認方法
テンパリングが成功したかどうかは、簡単なテストで確認できます。
テスト方法
- スプーンやパレットナイフにチョコを薄くつける
- 室温で2〜3分、または冷蔵庫で1〜2分放置
- 固まり具合をチェック
成功の4つの目安
- ツヤがある: 表面に光沢がある
- 指にくっつかない: 触ってもベタつかない
- パリッと割れる: 割ると「パキッ」と音がする
- 白い模様がない: 表面が均一な色
これらすべてをクリアしていれば、テンパリング成功です。
テンパリング失敗の原因と対処法
テンパリングは温度管理がシビアな作業。失敗することもありますが、原因を知っていれば対処できます。
主な失敗パターンと原因
| 失敗 | 原因 | 対処法 |
|---|---|---|
| 表面が白くなる | 温度管理ミス(ファットブルーム) | 再度溶かしてテンパリングやり直し |
| 固まらない | 温度が高すぎる/結晶不足 | 冷却温度を下げてやり直し |
| ザラザラする | 水分混入/急加熱 | 焼き菓子に転用 |
| 粘度が高すぎる | 過結晶(冷やしすぎ) | 少し温度を上げる |
| ツヤがない | 結晶不安定 | 再テンパリング |
失敗を防ぐ6つのコツ
- 水分を絶対に入れない: 道具の水滴を完全に拭き取る
- 温度計を使う: 目分量ではなく正確に測定
- 適量で作業: 最低200g以上推奨(少量は温度変化が激しい)
- 室温を管理: 18〜23℃、湿度45〜55%が理想
- ゆっくり均一に混ぜる: 空気を入れずに撹拌
- 直火はNG: 必ず湯煎または電子レンジで
失敗したチョコの活用法
テンパリングに失敗しても、チョコレート自体は食べられます。
- 焼き菓子に使う: ブラウニー、ガトーショコラ、チョコマフィンなど
- ホットチョコレートにする: 温めた牛乳に溶かすだけ
- 再テンパリング: 水分混入以外の場合は、もう一度やり直せる
ブルーム現象とは?白くなったチョコは食べられる?
チョコレートの表面が白くなる現象を「ブルーム」と呼びます。
ファットブルーム
- 原因: テンパリング不良、温度変化による結晶の再配列
- 見た目: 表面が白っぽくマダラになる
- 食べられる?: 見た目・口溶けは悪いが、食べても問題なし
- 復活方法: 再度溶かしてテンパリングやり直し
シュガーブルーム
- 原因: 湿気による砂糖の溶解・再結晶
- 見た目: 表面がザラザラ、白い斑点
- 食べられる?: 食べられるが、食感は悪い
- 復活方法: やり直し不可(焼き菓子などに転用)
白くなったチョコレートは見た目こそ悪くなりますが、食べても体に害はありません。安心してください。
よくある質問(FAQ)
Q: テンパリングなしでチョコは作れますか?
A: 作れますが、ツヤがなく、口溶けの悪いチョコになります。見た目を気にしない場合(焼き菓子の材料など)はテンパリング不要です。
Q: テンパリングに失敗したチョコはどうすればいい?
A: 水分が混入していなければ、再度溶かしてテンパリングをやり直せます。水分が入った場合は、ブラウニーやホットチョコレートに活用しましょう。
Q: 温度計がない場合はどうすればいい?
A: 正確なテンパリングには温度計が必須です。製菓用の温度計は1,000円程度で購入できるので、準備することをおすすめします。
Q: チョコレートの量が少ないとテンパリングは難しいですか?
A: 少量は温度変化が激しいため難しくなります。最低でも200g以上で作業するのがおすすめです。少量の場合は電子レンジ法やマイクリオ法を試してみてください。
まとめ
テンパリングとは、チョコレートのカカオバターをV型結晶という最も安定した状態に整える温度調整作業です。
- なぜ必要?: カカオバターには6種類の結晶型があり、V型結晶だけがツヤ・口溶け・硬さを実現する
- 基本原理: 溶解(50℃)→ 冷却(27〜28℃)→ 再加熱(31〜32℃)の3段階
- 初心者におすすめ: マイクリオ法 or 電子レンジ法
- 失敗の原因: 温度管理ミス、水分混入
- 失敗しても大丈夫: 再テンパリングや焼き菓子に活用できる
テンパリングは最初は難しく感じるかもしれませんが、コツをつかめば必ず成功します。失敗を恐れず、何度でもチャレンジしてみてください。

この記事を書いた人
佐藤 真理子(チョコレートライター)
製菓業界での勤務経験を活かし、チョコレートの魅力を分かりやすく伝える記事を執筆。特に海外ブランドや最新トレンドに詳しく、年間200種類以上のチョコレートをテイスティング。
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