手作りチョコレートのレシピを見ていると、「ガナッシュを作る」という工程が出てきます。でも、生チョコのレシピでも同じような作り方をしているような…?
「ガナッシュと生チョコって、結局何が違うの?」「トリュフとの関係は?」
この記事では、ガナッシュ・生チョコ・トリュフの3つの違いを、図解を交えてわかりやすく解説します。日本発祥の生チョコの歴史や、失敗しないガナッシュの作り方まで、手作りチョコに挑戦する前に知っておきたい知識をまとめました。
ガナッシュとは?「のろま」が生んだ美味しい発明
ガナッシュの定義
ガナッシュ(ganache)とは、チョコレートと生クリームを混ぜ合わせて乳化させた、なめらかなクリーム状のもののことです。
ここで重要なのは、ガナッシュは「材料」であって、「完成したお菓子」ではないという点。ガナッシュそのものを単品で食べることはほとんどありません。
ガナッシュは以下のようなチョコレート菓子を作るための「素材」として使われます。
- トリュフの中身
- 生チョコレート
- ケーキのサンドやコーティング
- ボンボンショコラのフィリング(中身)
- マカロンのクリーム
名前の由来は「うすのろ」?
「ガナッシュ」という名前、実はフランス語で「のろま」「まぬけ」という意味があります。なぜこんな名前がついたのでしょうか。
諸説ありますが、最も有名なエピソードがこちらです。
19世紀のフランスのお菓子工房でのこと。見習いの菓子職人が、うっかりチョコレートに温めた生クリームをこぼしてしまいました。それを見た師匠は激怒し、「Quel ganache!(このうすのろ!)」と叫びました。
ところが、仕方なく混ぜてみると、艶やかでなめらかなクリームができていたのです。この偶然の産物が「ガナッシュ」と呼ばれるようになった、というわけです。
【図解】ガナッシュ・生チョコ・トリュフの関係性
ガナッシュ、生チョコ、トリュフ。この3つの関係を一言で表すと、こうなります。

- ガナッシュ = 材料
- 生チョコ・トリュフ = ガナッシュを使って作るお菓子
つまり、ガナッシュという「材料」から、2種類の「お菓子」が生まれるのです。
ガナッシュから生まれる2つの道
【ガナッシュ】(材料:チョコ+生クリーム)
- → 冷やして固める → カット → ココアをまぶす →【生チョコ】
- → 丸める → チョコでコーティング → 仕上げ →【トリュフ】
どちらのお菓子も、スタート地点は同じ「ガナッシュ」です。そこからどのように加工するかで、別々のお菓子になるというわけです。
生チョコとは?日本生まれの「やわらかチョコ」
生チョコの特徴
生チョコレートとは、ガナッシュを型に流して冷やし固め、四角くカットしてココアパウダーをまぶしたお菓子のことです。
| 項目 | 一般的なチョコ | 生チョコ |
|---|---|---|
| 水分量 | 3%以下 | 10%以上 |
| 食感 | パリッと固い | なめらかでやわらか |
| 保存 | 常温可 | 要冷蔵 |
| 賞味期限 | 長い | 短い(冷蔵で5日程度) |
生チョコは日本発祥だった!
「生チョコ」は、実は日本で生まれたお菓子です。
1988年、神奈川県平塚市にある洋菓子店「シルスマリア」で誕生しました。開発したのは、オーナーシェフの小林正和氏。
小林シェフは、トリュフを作っているときにこう思いました。
「このトリュフの中身(ガナッシュ)だけを食べさせることはできないだろうか」
そこから、チョコレートや生クリームの種類、固さや粘り気を何度も調整。ついに、なめらかでやわらかい「生チョコレート」の原型が完成しました。
レシピを公開した理由
興味深いのは、小林シェフが生チョコのレシピを特許で守らなかったことです。
「この美味しさを多くの人に知ってもらいたい」という思いから、あえてレシピを公開しました。その結果、生チョコは日本全国に広まり、今では冬の定番スイーツとなりました。
生チョコの「日本独自ルール」公正競争規約
日本では、「生チョコレート」を名乗るための明確なルールがあります。これは「チョコレート類の表示に関する公正競争規約」として、業界の自主ルールで定められています。
生チョコを名乗る3つの条件
「生チョコレート」として販売するためには、以下の3つの条件をすべて満たす必要があります。
| 条件 | 基準 |
|---|---|
| チョコレート生地 | 全重量の60%以上 |
| 生クリーム | 全重量の10%以上 |
| 水分 | 全重量の10%以上(生クリーム含む) |
この基準を満たさないものは、「生チョコレート」と表示して販売することができません。
ココアパウダーをかけた場合の条件
生チョコの多くは、仕上げにココアパウダーをまぶします。この場合、追加の条件があります。
- 生チョコレートが全重量の60%以上
- チョコレート生地が全重量の40%以上
海外には「生チョコ」がない?
生チョコレートは日本で独自に発展したお菓子です。そのため、海外にはほとんど普及していません。
ただし、似たようなお菓子として、スイス・ジュネーブの「パヴェ・ド・ジュネーブ(Pavé de Genève)」があります。最近では、日本の生チョコが海外でも知られるようになり、「Nama-Chocolate」という名前で通じることもあるそうです。
トリュフとの違いは「コーティング」
トリュフの定義と由来
トリュフチョコレートとは、ガナッシュを丸めて、溶かしたチョコレートでコーティングし、ココアパウダーや粉糖、刻みナッツなどをまぶして仕上げたお菓子です。
名前の由来は、高級食材として知られるきのこの「黒トリュフ」。ゴツゴツした丸い形状と、ココアパウダーをまぶした茶色い見た目が、土から掘り出したトリュフに似ていることから名付けられました。
トリュフの構造
- 中心: ガナッシュ(丸めたもの)
- 外側: チョコレートコーティング
- 仕上げ: ココアパウダー、粉糖、ナッツなど
この構造により、「外はパリッ、中はトロッ」という独特の食感が生まれます。
生チョコとトリュフの違い
| 項目 | 生チョコ | トリュフ |
|---|---|---|
| 形状 | 四角形(カット) | 球形(丸める) |
| コーティング | なし | チョコレートでコーティング |
| 食感 | 全体がやわらか | 外パリ、中トロ |
| 仕上げ | ココアパウダー | ココア、粉糖、ナッツなど |
| テンパリング | 不要 | 必要(コーティング用) |
【比較表】ガナッシュ・生チョコ・トリュフの違い
ここまでの内容を表にまとめます。

| 項目 | ガナッシュ | 生チョコ | トリュフ |
|---|---|---|---|
| 分類 | 材料 | 菓子 | 菓子 |
| 状態 | クリーム状 | 固形(四角) | 固形(球形) |
| そのまま食べる | × | ○ | ○ |
| コーティング | なし | なし | チョコレート |
| 日本の規格 | なし | あり | なし |
| 発祥 | フランス | 日本 | フランス |
一言でまとめると
- ガナッシュ = チョコ菓子を作るための「材料」
- 生チョコ = ガナッシュを固めた「日本発祥の菓子」
- トリュフ = ガナッシュを丸めてコーティングした「フランス風の菓子」
失敗しない!ガナッシュの基本レシピ
ここからは、実際にガナッシュを作る際のポイントを解説します。
チョコと生クリームの配合比率
ガナッシュを作る際、チョコレートの種類によって生クリームの量を調整する必要があります。
| チョコレートの種類 | チョコ : 生クリーム |
|---|---|
| ダークチョコレート | 2:1(チョコ100g : 生クリーム50ml) |
| ミルクチョコレート | 3:1(チョコ100g : 生クリーム約33ml) |
| ホワイトチョコレート | 5:1(チョコ100g : 生クリーム20ml) |
覚え方のコツ: カカオ分が高いほど、生クリームの割合を増やす
基本の作り方(5ステップ)
材料(ダークチョコの場合):
- ダークチョコレート: 100g
- 生クリーム: 50ml(脂肪分35%程度)
作り方:
- チョコを刻む: チョコレートを細かく刻み、耐熱ボウルに入れる
- 生クリームを温める: 生クリームを小鍋に入れ、弱火で加熱。鍋肌に小さな泡が立ってきたら火を止める(沸騰させない)
- チョコに注ぐ: 温めた生クリームをチョコレートに注ぎ、1分ほどそのまま待つ
- ゆっくり混ぜる: 中心からゆっくり円を描くように混ぜ始める。外側へと少しずつ範囲を広げていく
- 艶が出たら完成: 全体がなめらかになり、艶が出てきたら完成

分離を防ぐ4つのコツ
ガナッシュ作りで最も多い失敗が「分離」です。油と水が分かれて、ボソボソになってしまう状態です。
| 失敗の原因 | 対策 |
|---|---|
| 生クリームが熱すぎる | 沸騰直前で止める(小さな泡まで) |
| 混ぜ方が激しい | 泡立て器でガシャガシャ混ぜない。ゴムベラでゆっくり円を描く |
| 生クリームの脂肪分が高い | 35%前後のものを使用。45%以上は分離しやすい |
| 水が入った | 器具は完全に乾燥させる。湯気にも注意 |
分離してしまったら?
万が一分離してしまっても、リカバリーできる場合があります。
- 方法1: 少量(大さじ1程度)の温かい生クリームを加えて、再度ゆっくり混ぜる
- 方法2: 湯煎で少し温めながら、ゴムベラでゆっくり混ぜる
- 方法3: ハンドブレンダーで軽く撹拌する(やりすぎ注意)
生チョコとトリュフ、どちらを作る?
バレンタインなどで手作りチョコに挑戦するとき、生チョコとトリュフのどちらを作るか迷う方も多いでしょう。それぞれの特徴を比較してみます。
難易度で選ぶ
| 項目 | 生チョコ | トリュフ |
|---|---|---|
| 難易度 | ★★☆(初心者向け) | ★★★(中級者向け) |
| テンパリング | 不要 | 必要(コーティング用) |
| 作業工程 | 流して固めてカット | 丸める→コーティング→仕上げ |
| 作業時間 | 短め | やや長め |
| 見た目 | シンプル | 華やか |
初めての手作りチョコなら、生チョコがおすすめです。テンパリング(チョコレートの温度調整)が不要で、ガナッシュを型に流して固めるだけなので、失敗しにくいです。
シーンで選ぶ
生チョコがおすすめの場合:
- 初めての手作りチョコ
- 大量に作りたいとき(職場への義理チョコなど)
- 時間があまりないとき
- シンプルな見た目が好み
トリュフがおすすめの場合:
- 本格的なものを作りたい
- 見た目にこだわりたい(バリエーションも豊富)
- テンパリングに挑戦してみたい
- 少量を丁寧に作りたい(本命チョコなど)
まとめ
ガナッシュ、生チョコ、トリュフの違いを整理しましょう。

3つの関係性
- ガナッシュ = チョコと生クリームを乳化させた「材料」
- 生チョコ = ガナッシュを固めた「日本発祥のお菓子」
- トリュフ = ガナッシュを丸めてコーティングした「フランス風のお菓子」
覚えておきたいポイント
- ガナッシュは材料: そのまま食べるものではなく、お菓子を作るための素材
- 生チョコは日本発祥: 1988年、シルスマリアで誕生
- 日本には公正競争規約がある: 生チョコを名乗るには基準を満たす必要がある
- トリュフにはコーティングがある: 外パリ、中トロの食感
初心者へのおすすめ
手作りチョコに初めて挑戦するなら、まずは生チョコから始めてみてください。ガナッシュを作って型に流し、固めてカットするだけ。テンパリングも不要なので、失敗しにくいです。
慣れてきたら、トリュフにも挑戦してみましょう。丸める工程とコーティングが加わりますが、その分、より本格的なチョコレート菓子を楽しめます。
参考文献
- 明治 Hello Chocolate「ガナッシュとは?生チョコやトリュフとの違い」
- シルスマリア公式サイト
- 全国チョコレート業公正取引協議会「チョコレート類の表示に関する公正競争規約」
- cotta「ガナッシュとは | 失敗しない作り方」
- 富澤商店「ガナッシュとは?」
この記事を書いた人: 佐藤 真理子(チョコレートライター)
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